KARTEの強みが活きた、顧客起点のプロジェクト
大畑 アップデートの実施に当たっては、お客様の声を聞きながらサービス・機能を改善していくデザイン思考を取り入れた開発アプローチを採用されたそうですが、今回のプロジェクトはどんなプロセスで進められたのですか。
小笠原 お客様の人生に寄り添うパートナーとして私たちに求められるものは何かを知るためにワークショップを開いたり、節目節目ではアンケート・インタビューを実施したりして、お客様の声に徹底して耳を傾けました。
住宅選びや契約、引渡しなどでお客様が何にお困りになっているのか、どんなニーズがあるのかといったことを確認し、要件定義に反映して実証用のシステムを吉田さんたちNRIデジタルのメンバーと一緒に開発し、PoC(概念実証)を行いました。

三菱地所レジデンス 執行役員
C・DX企画部長
マンションはモデルルームを開設してから販売、契約、引渡しまで年単位の時間がかかり、物件ごとにそのフェーズが異なるので、購入検討支援サービスはこの物件、契約・引渡し支援サービスは別の物件というように、いくつかの物件に分けてPoCを行い、そこでまたアンケート・インタビューを実施して、サービスと機能をブラッシュアップしました。
結果的に、マンションの購入検討者や契約者が抱えている課題の解決に本当に必要なサービスと機能に特化することができました。言わば顧客体験にダイレクトに響くものにフォーカスし、それを本番環境に組み込んで、メジャーアップデート後のレジデンスクラブのローンチに至ったというプロセスです。ローンチ後のいまも、アンケートやインタビューを続け、改善につなげています。
吉田 今回のプロジェクトでは、KARTEの強みが活きたと思います。私たちNRIデジタルは2019年から三菱地所グループのDX(デジタル・トランスフォーメーション)をご支援していますが、グループ共通のCX(顧客体験)プラットフォームとしてKARTEの導入を提案し、グループのさまざまなウェブサイトやアプリに実装されています。すでに皆さんが使い慣れているツールということもあり、メジャーアップデート後のレジデンスクラブ2.0でもKARTEを使うことが既定路線でした。
ですから、PoCのための実証用システムも本番システムもKARTEを使いながら開発しました。PoCといってもお客様が住まい選びや契約・引渡し手続きで実際に使われるものなので、本番システムと同じように動くものでなければなりません。同時にお客様からのフィードバックを受けて、柔軟につくり直しできる必要がありました。KARTEはその要件を満たしていたのです。

NRIデジタル マーケティングDX事業ユニット長
今回工夫したのは、住まい選びを支援する三菱地所レジデンスの販売部門の方々や、契約・引渡し手続きを担当する社員の方々、あるいは入居などの管理に関する手続きを担当する三菱地所コミュニティの方々が、KARTEを使っていることを意識せず、業務を進められるようにすることでした。
普段マーケティングに携わっている方々は、先ほど言った通りKARTEを使い慣れていらっしゃいますが、販売や契約などを担当されている方々はそうではありません。そこで、日頃使い慣れている業務システムに、普段と同じようにお客様の検討状況や手続きの進行状況を入力すると、業務システムとKARTEが連携し、お客様がご覧になる画面情報を自動的に入れ替えたり、ポップアップ画面を表示したり、メールで通知を送ったりする仕組みを構築しました。
たとえば、同じ物件であってもご検討中のお客様と契約済みのお客様ではレジデンスクラブで閲覧できる情報は大きく違っており、契約済みであればご自身が購入した部屋の情報を詳しく見ることができますし、各種の手続きに必要な書類もウェブ上にすべて揃っています。つまり、現業部門の業務を変えたり、新たな作業負荷を発生させたりすることなく、顧客体験を豊かにできる環境をKARTEでつくり上げました。