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交渉は対人スキルにとどまらない
交渉相手にイエスと言わせるには、いったいどうすればよいのか。交渉には3つの次元があり、それぞれにハードルと解決法がある。
第1次元(1D)は交渉の場における戦術。第2次元(2D)は交渉条件の設定。第3次元(3D)は交渉全体の組み立てである。いずれも重要だが、実際の交渉に当たる人を見ても、また交渉に関する文献を読んでも、2Dまでしか視野に入っていないことがほとんどである。
1Dの交渉術に関する本は数多く、交渉の場での駆け引きなど戦術レベルが中心である。主な障害は、当事者間の信頼感の不足、コミュニケーションのまずさ、交渉人の辛辣すぎる態度などである。
これらの課題について、ボディ・ランゲージを読む、状況に臨機応変に対処する、相手の話を導き出す聞き手になる、説得力をもって主張する、提案や逆提案を判断する、交渉のスケジュールを管理する、相手のトリックに備える、文化の違いによる失態に気をつけるといった解決策を示している。
2Dの交渉条件の設定、つまり双方に長期的な価値を生み出すような条件を考えることも大切である。全関係者に十分な価値をもたらさない、あるいは成功の見込みが薄い場合でも、2D交渉に長けた人間なら、経済的価値やさまざまな価値がどこから生まれるかを的確に見抜き、全当事者にプラスとなる条件を案出するものだ。
たとえば、双方が何かを交換する取引でよいのか、どのような条件を設定するのか、不測の事態やリスク分担に関する規定を含んだ段階的な契約か、それともより変則的な取引なのか、経済的なニーズを満たすだけでなく、双方の体面を保つための契約なのかについて思いを巡らす。
交渉人は、対人関係と取引条件といった問題を超えて、1D、2Dのなかに3次元的な障害を見つける。これは交渉の組み立てを崩すものだ。よくあるものは、交渉相手やテーマを間違える、順序やタイミングを誤る、交渉が決裂した場合の逃げ道が少ないなどが挙げられる。
そこで3D交渉術の出番となる。それは、ゲームそのものを形成する、交渉の範囲や手順に手を加えて、思いどおりの成果を上げるというものだ。
交渉人はテーブルから離れたところで、まず積極的に動き、接触する相手を選び、接触の順序と交渉すべき問題、手段やタイミングを吟味したうえで、双方の期待を調整し、決裂の際の退路も十分に考えておく(表「交渉の3つの次元」を参照)。