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リユース業界のトップランナーの1社として、過去最高の売上高を更新し続けるコメ兵ホールディングス。その中核事業会社がコメ兵であり、成長の原動力は「リレーユース」を文化として根づかせようと取り組む独自の顧客体験(CX)戦略にある。同社が提供する価値の本質は、一点ものの商品との予期せぬ出会いがもたらす「ワクワク感」と、その価値を最大限に引き出す「人の介在」のかけ合わせにある。同社はCXプラットフォーム「KARTE」を導入し、そこから得られる行動データと自社が保有する商品データを組み合わせることによって、顧客理解の深化と新たな体験価値の創出を進めてきた。コメ兵の営業企画統括部を率いる諏訪弘樹氏と、同社の挑戦を伴走支援するプレイドの金井良輔氏の対談から、独自の顧客価値創造と顧客中心経営の本質に迫る。
「宝探し」のワクワク感を最大化する「人の介在」
金井 御社は「リユースから、リレーユースへ。」というスローガンを掲げ、単なる「モノの提供」に留まらず、顧客への「価値提案」、さらには顧客との「価値共創」を目指されています。好調な業績を牽引する「コメ兵ならではの顧客価値」とは、どのようなものだとお考えでしょうか。
諏訪 大切にしているのは、お客様の「ワクワク感」と、それを届けるための「人の介在」です。この2つが分かちがたく結びついていることが極めて重要だと考えています。
リユース商品の面白さは、すべての商品が一点もの(コンディションがそれぞれ違うため、同じものは二つとない)であるがゆえの「宝探し」のような感覚、心ときめく探索にあります。お客様は、新品ではもう手に入らない商品や、思いがけない商品と出会うことを楽しみにしていらっしゃいます。情報があふれる現代では、ほしいものをピンポイントで探すことは、誰でもできるようになりました。しかし私たちは、お客様が店舗に足を運ぶことで、「そうそう、これがほしかったんだ」とか、「知らなかったけど、この商品はいいな」といったように、ご自身の潜在的な欲求に気づくような、偶然の出会いを提供したいのです。
金井 その偶然の出会いや期待感を、さらに「人の介在」が高めていく、というイメージでしょうか。
諏訪 その通りです。商品をただ陳列するだけでは、その魅力は十分に伝わりません。たとえば、同じブランド、同じ型番の商品でも状態はさまざまです。新品同様のものもあれば、使い込まれた商品もあります。その商品の背景やストーリーを含め、スタッフがていねいにご説明し、お客様に寄り添いながら一緒に購入を検討するプロセス自体が、私たちの提供する顧客体験の重要な要素なのです。ですから、「商品とお客様をつなぎ、素晴らしい出会いを演出する」のが、私たちの役割ともいえます。単にモノを右から左へ動かすのではない、という私たちの理念が「リレーユース」という言葉には込められています。
金井 私自身、御社とのお付き合いを通じて、その「出会い」の価値を強く実感しています。毎日届く新着商品のメルマガは、つい見てしまいますし、これまで知らなかったブランドの服が「なんだかよさそう」と感じて、新たな興味につながることも少なくありません。購入に至らなくても、そのブランドへの関心が続いていく。これも一つの「出会い」ですよね。
また、さまざまな街を訪れるたびに、本当に多くの場所にKOMEHYOの店舗があることに驚かされます。店舗ごとに雰囲気や規模が異なり、その街に溶け込んでいる。「こんなところにもあるんだ」という発見も、また違った角度からの「出会い」だと感じます。
諏訪 ありがとうございます。特に大型店では、地域の特性を強く意識した店舗づくりを行っています。たとえば、「KOMEHYO SHIBUYA」(東京・渋谷店)は、お客様の年齢層が20〜30代中心で、40〜60代が多い他の店舗とは明らかに異なります。これは、私たちが届けたかった体験が、渋谷店を訪れるお客様にきちんと届いているからだと思います。