「誠実」な組織文化が、顧客中心経営の礎となる
金井 一般論として言うと、一貫した顧客体験の実現を阻む壁として「組織の分断」と「データの分断」が挙げられます。短期的なKPI(重要業績評価指標)を追うあまり、部分最適化やセクショナリズムに陥り、顧客視点が失われてしまうケースがよくあります。あるいは、ツールが分断されていることでデータも分断され、顧客にとっての本当の価値が何なのかを把握できなくなってしまう。多くの企業がこうしたジレンマを抱えています。
諏訪 幸いなことに、当社には「組織の分断」はありません。しかし、オンラインとオフラインの「データの分断」はたしかに存在していました。KARTEを活用することでデータを統合し、顧客体験の向上につなげることができました。
金井 御社には、組織の論理より先に「お客様起点」で考えるカルチャーが根づいていると感じます。だからセクショナリズムが生まれにくいのではないでしょうか。
諏訪 当社の企業文化は、「誠実」という言葉に集約されます。これは、コメ兵ホールディングス社長の石原(卓児氏)が非常に重視している価値観です。
コメ兵には、「高く買えばモノが集まり、安く売れば人が集まる」 という創業の精神があります。リユース品は一点ものであるため、この精神を実現するためには目利き力を養うたゆまぬ努力と、品物やお客様に誠意をもって向き合う姿勢が必要です。常に誠実であることは、商売を継続するための絶対条件だと考えています。
また、コメ兵のクレド(信条)の一つに「迷ったら『まじめ』を選ぶ」というものがあります。これは、お客様に対してけっして嘘をつかず、判断に迷った際には常に真面目であることを基準に選択するという、企業姿勢を表しています。
金井 御社の皆さんとミーティングをしていても、それを感じます。「どうすれば購入点数や客単価を増やせるか」という発想ではなく、「いかにしてお客様にいい体験を提供できるか」という思考が自然に組み込まれている。お客様をがっかりさせたくないという強い思いが、結果としてリピーターやロイヤル顧客の増加につながっている。ビジネスの王道ですが、それを当たり前に実践されている点が素晴らしいと思います。
加えて、諏訪さんがマーケティングと営業システムの両方を統括されている組織体制も、機動力の源泉になっているのではないでしょうか。
諏訪 顧客体験の向上には、データ活用と迅速なアクションが不可欠ですが、そこには必ずシステムの壁が立ちはだかります。かつて、当社のシステム部門は依頼された業務に対応する受け身の姿勢が強かったのですが、その状況を打開するため、会社に申し出てマーケティングと兼任させてもらうことにしました。システム部門のメンバーと対話を重ね、能動的に動く必要性を訴え続けてきましたが、いまでは若いメンバーも加わり、かなり能動的に動けるようになっています。
金井 デジタルテクノロジーの進化により、マーケティングの選択肢は理論上、大きく広がっています。多くのユースケースが存在しますが、それらが自社にとって有効であるか、そして迅速かつ高精度に実行できるかは、ITとマーケティングの連携にかかっています。ですから、IT部門とマーケティング部門の距離を近くするのは、有力なアプローチだと思います。
グループのデータ資産を統合し、次世代の「出会い」を創造する
金井 顧客への価値提案と価値共創をさらに進化させるために、今後チャレンジしたいことはありますか。
諏訪 現在、コメ兵グループは19社(2025年3月末時点)あり、グループ全体でお客様への提供価値をどう高めていくかが大きなテーマの一つです。その第一歩として、コメ兵を含むブランド・ファッション事業では、グループ間での共通商品データベースが開発できないかと模索中です。これが実現すれば、グループ内での強固な基盤ができることとなります。
その先には、顧客データの統合も見据えています。これにより、さらに多くのお客様へ、グループ全体の豊富な商品の中から新たな出会いの機会を提供できるようになります。将来的には、お客様が自然言語で曖昧な要望を伝えるだけで、AIが最適な商品をレコメンドする時代が来るでしょう。そうした未来に備え、グループ全体のデータ統合を進めることで、お客様から選ばれ続ける存在でありたいと考えています。引き続き御社のご支援をお願いします。
金井 もちろんです。
私たちプレイドは、CXプラットフォームを提供するだけでなく、クライアントの顧客中心経営の実現を支援するパートナーへと進化していかなければならないと考えています。コメ兵さんはすでに顧客中心経営を実践されていますが、データとテクノロジーを活用することで、その実践力をさらに高めるご支援ができると信じています。
デジタルマーケティング支援のイメージが強いかもしれませんが、お客様のファーストパーティデータとKARTEを組み合わせることで、マーケティング領域を超えたあらゆる事業活動をご支援できるポテンシャルがあります。コメ兵さんのように、誠実に顧客と向き合う企業が増えることが、日本全体の活性化にもつながると信じ、私たちも自己革新を続けていきます。
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