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ますます増えるブランドの連携
フォルクスワーゲン(以下VW)とトレックはチームを組み、車と自転車をセットで提供している。アメリカン航空はシティバンク、VISAとクレジット・カードで提携し、スバルはL.L. ビーン・バージョンのステーションワゴン〈スバル・アウトバック〉(日本では〈レガシィ・ランカスター〉)を販売。デルコンピュータ(以下デル)は製品にマイクロソフトとインテルのロゴをつけているし、トイザらスはアマゾン・ドットコムと組んでオンラインの玩具店を立ち上げている。
こうした異種ブランドの連携はいまや当たり前の現象となっており、ブランド・マネジメントのルールを変えつつある。ほとんどの成功や失敗がブランド単体での実力──製品やサービスの品質、市場でのポジショニング、広告訴求力など──に帰因することができた時代は、ブランドをそれぞれ単独に管理すればよかった。
しかし、今日のブランド・マネジメントはより複雑になっている。異なる会社に属するブランドが複雑に絡み合っており、行き届いた目配りが欠かせない。
VWのマーケターは、VWブランドについて意思決定を下す際、トレックのことも念頭に置かなければならないのだろうか。当然である。それでは、L.L. ビーンは、スバルを常にウォッチすべきだろうか。これまた言うまでもない。
ところが、ブランド・マネジメントの主要ツールの一つ「ポートフォリオ・マッピング」は、市場の変化から取り残されているうえ、時代遅れの2つの前提──(1)企業は自社ブランドのみに集中すべきである、(2)ブランド・マネジャーは一度に1つのブランドしか扱うべきではない──にいまだに固執している。
これまでは、自社が有するブランドを、社内で決められたラインに沿ってマッピングしていた。この方法では、顧客の知覚にブランドがどのような影響を及ぼすかはもとより、他社のブランドとどう結びつくかに至ってはまったく考慮していない。
今日、こうした古い手法は捨てなければならない。いま必要なのは、ブランドが顧客の目に実際にどう映るのかを反映した、まったく新しいマッピング・ツールである。
本稿では、これを分子モデルになぞらえて「分子モデルのブランド・ポートフォリオ」(以下「分子モデル」と略す)と命名し、多次元マップの作成プロセスを紹介する。この新しい方法は異なるブランド同士の関係性を明らかにし、ブランド戦略を構築する際の強力な手段となるはずだ。