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説得を「芸術」から「科学」へ
聴衆の心をわしづかみにする方法。意見の固まっていない人々を惹きつける方法。反対の立場を取っていたはずの人々をなびかせる方法──。
これらの方法を心得ているのは、ごく一握りの人々のみである。こうした「説得の達人」が周囲に魔法をかける様子を見ていると、感嘆すると同時にいらだちを感じずにはいられない。
感嘆するのは、カリスマ性と弁舌の巧みさによって他人を意のままに操っている点、そしてそれ以上に、相手の心を強く惹きつけて話に聞き入らせている点である。
それでは、なぜいらだちを感じるのか。生まれながら高い説得力を持った人々の多くが、その傑出したスキルを解き明かすことも、他人に伝授することもできないからだ。
彼ら彼女らはいわば芸術を極めているのである。芸術家は一般に、アートを実践することには長けているが、その秘訣を他人に伝えることは得意としない。
世のなかには、カリスマ性にも説得力にも乏しいにもかかわらず、リーダーとして部下に何とか仕事をしてもらわなければならない人々がいるが、芸術家はそうした人々の力になることができない。
「部下に何とか仕事をしてもらう」というのは、多くの企業のマネジャーにとって辛いけれども避けられない任務である。マネジャーたちは、自分のことばかりを考えているような社員を相手に、日々、どうすればモチベーションを引き出すことができるのか、どのような指示を出せばよいのか頭を悩ませている。
「上司の言うことを聞け」などというセリフはまったく通用しない。こうしたセリフは、悪くすれば部下のやる気を削いだり、プライドを傷つけたりしかねない。