戦略実行の礎となる「信頼関係」の築き方

 優れた戦略やモデルも、それを実行する「人」と「組織」がなければ絵に描いた餅に終わる。セッションの終盤、議論は戦略実行の秘訣、とりわけ「数字の壁、ルールの壁」をいかにして越えるかという、多くの企業が直面する課題へと及んだ。

「丸亀うどーなつ」のように、既存のルールや指標では測れない挑戦をどうやって実現するのか。南雲氏が挙げた秘訣は、「『あいつに任せれば、結果を出す』という信頼関係を社内で築くこと」だった。

「頼まれたことはきちんとやり遂げる、自分が提案したことは責任を持って結果を出す。そういうスモールサクセスを積み上げて信頼関係ができていれば、いざという時に周りの人たちが納得してくれるし、協力もしてくれます」。この地道な積み重ねこそが、大きな飛躍を可能にすると南雲氏は語る。

 金田氏は、「どんなにいい戦略を立てても、それを実行するのは『人』なので、人との信頼関係がすべての基盤になるという考えは、あらゆる業種・業態にとって普遍的な教訓となります」とコメントした。

金田拓也
プレイド
Sales Team Head of Sales

 セッションの最後に、今西氏は「丸亀製麺は感動や感性といったエモーショナルな部分を重要視しながらも、その裏側には緻密なロジックがあり、誰もが納得できるように言語化されている」と総括。そして、「長期的な競争優位の確立」と、その基盤となる「人と人の信頼関係」、それを築く「地道なスモールサクセスの積み重ね」が非常に参考になったと述べた。

 南雲氏は、「お客様の本能や根源的な欲求を刺激するインサイトを見つけ出し、それをもとに感動体験をデザインし、提供する」という自社の姿勢をあらためて強調し、「重要なのは、自社らしい、自社のブランドにふさわしい価値創造戦略やマーケティングモデルをつくること。今日のセッションから、一つでもそのヒントを見つけていただければ嬉しい」と締めくくった。

 効率や数字にこだわるあまり、人間的な感性や情熱が見失われがちな現代のビジネス環境において、丸亀製麺の二律両立の取り組みは、新たな「両利きの経営」の一つの形を示しているともいえるだろう。そして何よりも「人の力」を信じ、感動体験を創造する。そこに、丸亀製麺が顧客から選ばれ続ける理由があるのは間違いない。

●本セッションのアーカイブ動画を配信中です。視聴はこちら

■お問い合わせ
株式会社プレイド
〒104-0061 東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 10F
https://plaid.co.jp
https://karte.io