多くの企業が見過ごしている
新興国特有の課題

 中国を離れて20年近く世界的なコンサルティング会社で働いてきたメイは最近、北京に戻らなければならなくなった。彼女はそこで、子育てとはまた違う、ワーク・ライフ・バランスというプレッシャーにさらされている。

 メイの家族は高齢のため、だれかの世話が必要だが、中国では介護サービスを利用したり、介護施設に親を預けたりすることは恥ずべきことと見なされている。メイは、こうした義務が自分のキャリアに及ぼす影響を案じている。会社側は帰国の支援はしてくれたものの、彼女が直面している問題には気づいていないようである。

 UAE(アラブ首長国連邦)のある銀行の債券部門で働くラナは、将来有望なアナリストである。この銀行では、社員が専門性を磨く機会を定期的に提供しているが、彼女は最近、ニューヨーク研修の話を断らざるをえなかった。UAEでは、男性親族のつき添いがない限り、独身女性が一人で飛行機に乗ったり、ホテルに泊まったりすることは許されないからである。テレビ会議の設備も提供されず、本国からの参加すらままならないラナにすれば、「泣き面に蜂」であった。