何を考えているかではなく
何を言うかが重要である

 世界中のあらゆる組織で、価格戦略から従業員の採用の決定、大規模な買収まで、日々さまざまな事柄について意見の相違が生じている。意見とは、ぶつかり合うべきものだ。

 社会科学の各分野の研究が示すように、意見の相違は大きな利点をもたらす。多様な意見が創造性を刺激し、手痛いミスを防ぎ、よりよい意思決定へと向かわせる。しかし、当然ながらリスクもある。意見のぶつかり合いをうまく処理できないと、人間関係や金銭面での大きな損失を招く可能性がある。

 何十年にもわたり、研究者やコンサルタントらは、建設的に意見を戦わせるにはどうしたらよいかについて、数々の助言をしてきた。

「相手の立場に立って考えよう」「思いやりや共感を持とう」「相手を判断するのではなく理解するよう努めよう」など、相手に対する考え方や気持ちのあり方を教示する人もいれば、「曖昧さを解消するための質問をしよう」「『あなたは~だ』ではなく、『私は~だ』という言い方をしよう」「オープンボディランゲージで、受容力、親しみやすさ、相手と積極的に関わろうとする意思を示そう」など、振る舞いや発言のあり方を指南する人もいる。

 しかし、こうした数多くの助言をもってしてもなお、衝突はなくならない。

 この10年間、筆者らはさまざまな状況で人々がより建設的に意見を戦わせる方法について、いくつもの実験を実施した。その結果得られた重要な結論は、人間の心の内面のプロセス(考え方や気持ちのテクニック)が結果に与える影響は限定的だということである。理由は単純だ。私たちは他人の心を読むことができないからである。

 つまり、こちらがコンフリクトマネジメントを試みていると相手に気づいてもらい、価値を認め、反応してもらうためには、自分の考えや気持ちを振る舞いや発言に反映させなければならないということだ。心の状態は、観察可能な言動に変換しなければならない。

 この考えを検証するため、筆者らは最近、調査に参加すると報酬が得られるオンラインプラットフォームで1113人の米国人を集め、調査を実施した。

 3つのグループに分けられた参加者たちは、人材の採用方針をめぐり、自分と意見が対立する相手を想定してメッセージを書いた。その際、1つのグループは、何ら具体的な指示を与えられなかった。もう1つのグループは、相手の立場に立って考え、異なる視点を持つ人たちに共感を示すべきであるという、よくあるアドバイスを受けた。最後のグループは、自分と異なる意見に対する受容性を表現するために用いるとよい特定の語句について指示を受けた。