リチャード・ノーマン氏とラファエル・ラミレス氏は、その論文"From Value Chain to Value Constellation: Designing Interactive Strategy"(HBR July-August 1993「価値付加型から価値創造型企業への変革」としてDHB10-11月号に掲載)の中で、市場で成功する企業は単に価値を付加するだけでなく、価値を再創造するようになってきていると主張している。

 企業の重要な戦略的任務は、ビジネス・システムの登場人物であるサプライヤー、パートナー企業、顧客の間の役割や相互関係を再構築し、新しい形態と新しい配役により価値を創造することだとする。

 価値についてのこの新しい論理が、従来のものと異なっているのはどのような点だろうか。この論理は、商品とサービスの間の垣根を取り払い、両者を組み合わせて、関係者の活動をベースとした「提供作品(offerings)」を構成し、これから顧客が自分たちのために価値を創造することができるようにするというものである。

 だが、潜在的な提供作品はもっと複雑となるため、それをつくり出すのに必要な相互関係も複雑となる。その結果、企業の戦略的任務は、自社の能力と顧客ベースとを再構築し、両者を統合することとなるというのである。

 ノーマン氏とラミレス氏は、こうした新しい戦略の考え方について、3つのケースを紹介した。IKEAは、家具ビジネスにおける相互関係と組織的慣行を規定し直すことにより、世界最大の家庭用家具小売業者となった。デンマークの薬局とその全国組織は、医療制度の改革の機会をとらえて、顧客、医師、病院、製薬業者、デンマーク国内および国際の保健医療組織との相互関係を再構築した。最後にフランスの公共サービスの特許事業者は、その顧客であるフランスおよび世界中の地方政府との創造的な対話と、インフラストラクチャー分野で拡充を続ける多様な能力とをうまく組み合わせることをマスターした。

 9人の専門家に価値群(value constellation)という新しいモデルを検討してもらい、ノーマン氏とラミレス氏の議論にコメントを加えてもらった。

ケース・ヴァン・デル・ハイデン

ストラスクライド大学ビジネス・スクール教授(経営学、スコットランド州グラスゴー)

 競争に勝つための戦略を見つけ出すのは孤独な仕事である。経営に関して処方を示すような論文はみな、その結論部分に自滅の種を抱えている。論文の中のアドバイスは、すべての業種に適用した場合、競争上の有効性が損なわれるのである。そもそもの性格上、経営に関する論文は、極めて移り変わりの激しい分野であり、一時的な流行に係る部分も多く、不変の価値を持つものは何もないようにすら見える。したがって、世間に影響力を持つ論文は、移り変わり、変革に関する課題を扱ったものが多くなってしまう。

「価値付加型から価値創造型企業への変革」の中で、リチャード・ノーマン氏とラファエル・ラミレス氏は、企業と他企業あるいは顧客との間の相互関係【インターフェース】のあり方が現在変革期にあるようだと示唆する。この分野においては、顧客志向、外注化、ビジネスのやり方の見直し等々、非常に様々な戦略的活動が活発に行われている。ノーマン氏とラミレス氏は、こうした活動の底流にあるものを調べて、ビジネスの世界から大きな反響を呼んだ重要な結論を導き出した。

 ビジネスのパートナー同士の相互関係はすべて「分業」を構成する。ビジネス活動をサプライヤーと顧客の間でどう分担させるかは、基本的には、それぞれのパートナーが最も安いコストで最もうまくできる活動は何か、最も効率的な方法で提供作品をつくり上げるにはどうしたらよいかということに関する最適化という重要な問題である。結局のところ、競争に勝つのは、全体として最適の相互関係を持った企業だ。

 そして、提供作品の定義を考えることは、この相互関係を明確にすることである。もし、この相互関係の両側にいるパートナーの価値体系が比較的安定していれば、最適化の問題を何度も再検討する必要はない。両者間の条件は固定化されたものと考えて、それぞれの活動の最適化を進めればよい。このような状況下では、ビジネスはつくり出される製品によって定義されることとなる。例えば、「我々は石油業界にいる」という具合である。彼らは、よく知られた製品を市場に送り込むことに関して優秀で、競争力ある企業であろうと努めていればよいのだ。