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多くの企業が陥りがちな生成AI導入における誤り
2023年後半、消費財メーカーのレキットベンキーザーでは経営陣が生成AIの導入を検討していた。だが、考えられるユースケースはプレゼンテーションのドラフト作成から顧客サポートの提供、調達契約の最適化まで、業務全般に及んだ。多くのユースケースは時間の節約が保証され、速やかな投資対効果(ROI)が見込まれていたものの、それぞれが関連のないばらばらのタスクに適用されていた。
レキットの経営幹部は生成AIの導入によって時間が節約できる点には満足していたが、自社の戦略を改革したり、大きな優位性を生み出したりするまでの効果は得られないのではないかと危惧していた。彼らが求めていたのはわずかな効率改善に留まらない、もっと劇的な何かであった。
そこで、ポジティブなROIが得られる可能性のあるすべてのAIプロジェクトを承認するのではなく、一つの分野に的を絞ることにした。マーケティングである。
この分野ではインサイト生成やコンテンツ生成、新製品開発をはじめ、関連性のある多くのタスクに生成AIを活用することが可能だった。相互に関連するタスクは、同一のデータ、顧客、市場リサーチから集められた情報を利用していた。つまり、あるタスクの結果が別のタスクに結びついているということである。
たとえば、リアルタイムの顧客インサイトは、優れた製品イノベーションや適切なセグメンテーションにつながる。効果的で迅速な製品イノベーションは、ニーズに合った製品の市場投入に役立ち、ひいては顧客ロイヤルティ、リテンション、アドボカシーの強化をもたらす。経営幹部は、マーケティング分野に絞って生成AIを活用することで、大規模な業務改善を図れると確信していた。
レキットはもともと豊富な顧客データを有し、チームが予測AIをはじめとする最先端テクノロジーに秀でているなど、マーケティング分野に強みがあった。マーケティング業務の改善に特化して生成AIを導入したことで、担当部門において新たな業務展開の方法が明らかになった。
それによりマーケティングチームは、アプローチ全体を根本から見直す必要に迫られた。生成AIが1つか2つのタスクに限らず、マーケティング業務全体をどのように改善できるかを学習しながら、多くのプロセスの再構築を行ったのである。
慎重に検討を重ねて生成AIを導入した結果、レキットは2年と経たないうちに、以前より60%も速く製品コンセプトを生成できるようになったという。また、生成AIの力を借りて、ブランドコミュニケーションやマーケティングコミュニケーションのプロセス効率を30%以上改善することができた(プロセスによって数値は異なる)。AIに関する実験や投資の取り組みを、単一の分野に限定したうえで、相互に関連する機能やタスクに集中させていなければ、このような成果を収めることはできなかっただろう。
レキットの経験から重要な教訓を得ることができる。すなわち、企業が持続的な競争優位を築くには、生成AIの実装にありがちな関連する2つの間違いを避けなければならないということだ。1つ目は、労力やリソースを1回限りのユースケースに投じて会社全体に分散させること。2つ目は、目先のROIだけに着目することだ。
このアプローチ、すなわち即時のROIが確約されるので個々には正当化されるが、相互に関連性のないユースケースを数多く適用する方法は、しばしば「広く浅い」展開と呼ばれる。筆者らが話を聞いた多くの経営幹部は、生成AIを可能な限り広範囲に展開し、何が有効かを見極めるべきだと語った。



