ただし、欧米では、企業からOff-JTに派遣してもらうのは、自分の能力を開発し、市場価値を高め、キャリアを展開するチャンスだし、周りから認められる名誉や特権としての意味があるので、従業員側からの要求は高い。逆に、Off-JTに熱心でない企業は、人材育成に消極的で、人材を使い捨てるところと思われてしまうので、人気がない。
経験から学ぶ
「経験から学ぶことは大切である」と、70/20/10の公式はいう。仕事経験を通じて人は成長していく。あたりまえすぎて、文句もないだろう。そして、経験の影響については、デヴィッド・コルブが「経験学習モデル」として理論化している。コルブは経験から学ぶプロセスとして、図2に示した4つの段階を示し、それをサイクルとして回すことによって、経験から効果的に学習することができると考えている。

①具体的経験:対象者が何らかの具体的な経験をする
②内省的観察:経験をさまざまな角度から眺め、その良し悪しを深く考え、内省する
③抽象的概念化:内省によって導きだした教訓を抽象的概念や持論として昇華し、一般化を試みる
④積極的試行:一般化された概念や持論を新たな状況に応用し、実際に試してみる
仕事の経験を深く内省し、持論として概念化し、実際に応用してみる。そのプロセスは、職人が技を磨いていくときの流れと似ている。
かっちりとした育成制度がなくても、経験を通じて学ぶことが、職人に与えられた大切な学習の機会である。それなくしては、わが国の製造現場での技能形成はあり得なかった。だから、ものづくりに生きるわれわれの心に、強く響いてくるのである。そしてこれが、OJT神話を生み出した張本人である。