かといって、教える側の先輩たちも、ただでさえ日常業務に忙殺されており、丁寧に教育しようとする余裕がない。自分たちだってきちんと教えられた記憶がないから、後輩を教える自信もないし、意欲も沸いてこない。だから、悪循環は断ち切れないのだ。

 かつて「神話化」されたOJTが、いまや崩壊している。「OJT崩壊」と呼ぶべき現象だ。OJTはいまや、Old Japanese Trainingの略語と化している。

 そして現在、わが国の経営は、六重苦に喘いでいる。①円高、②高い法人税、③貿易自由化の遅れ、④労働規制、⑤温室効果ガスの規制、⑥電力不足というのが六重苦なのだが、「OJT崩壊」を、それに付け加えてもよいくらいだ。わが国の男性の平均寿命が七十九だから、それに追い着いてしまった。

カオスとなった現代

 サッカーファンの方々に、お題を1つ。現代サッカーの特徴を一言で表すとしたら、何でしょうか?

 レアル・マドリードのジョセ・モウリーニョ監督に聞いてみよう。その答えは、「フットボールはカオスである」。

 もともとサッカーという競技は、敵味方が入り乱れて、1つのボールを追う。ボールを取ったり取られたり、状況がくるくると目まぐるしく変化する。自陣から敵陣へ、ピッチの端から端までボールと選手がスピーディーに動き回り、その動きは止まることがない。

 野球と比べると一目瞭然だが、ボールがいつも動いていて、プレーがデッドの(止まっている)時間はほとんどない。攻守の変化が速いために、相手陣地でずっと攻めていても、ボールを奪われた瞬間に相手に一気に攻められて、大きなリスクを負う。逆に、相手に深く攻め込まれていれば、失点の機会が増えるが、それだけカウンター(速攻)のチャンスも増えてくる。