状況変化が激しく、局面がダイナミックに動いていくがゆえに、カオス(混乱)と呼べるほど不確実な状況からなっている。これこそが現代サッカーの特徴だ。それは現代社会やグローバルビジネスにも通ずるものなのだ。

 サッカーには、野球に見られるような、攻守が整然と分けられ、作戦を熟慮できる秩序と安定はない。野球型とサッカー型の組織論や管理者像が論じられることも少なくないが、ベンチで戦況を見つめている監督の指示が、なかなか効かないのが、サッカーの一面である。

 状況の変化が速すぎて、監督の采配するベンチワークが効く余地が少ない。サッカーに通じる現代のビジネスでは、管理職の人たちが、現場の部下から情報を吸い上げて、相談と根回しを繰り返しながら、冷静に意思決定をするのでは、追いつけない。だから、監督やマネジャーの立場からしてみれば、自分が指示を出して動かすのではなく、プレーヤーにエンパワメント(自律的に行動する能力を与えること)して、結果を出させるしかない。

 では、無秩序や混乱の様相を呈している現代のサッカーでは、チームを勝利に導くために、いったい何をどうすればよいのか?

 一流選手の条件として、身体能力やテクニックにも増して、メンタルのスピードが求められている。局面が目まぐるしく変化すれば、1つひとつのプレーは、ピッチに立った選手に委ねられなければならない。選手1人ひとりが、自分で状況を判断し、意思決定する必要がある。そこでは、判断のスピードが勝負を分ける。

 自ら判断してプレーするのと、監督の指示を思い出して動くのとでは、判断にコンマ何秒かの差が出る。このほんのわずかな判断の差が、プレーの差につながり、得点や失点の差になって表れるのだ。だからこそ、選手本人が主体的に考えて決断するフットボール・インテリジェンスが必要となる。

 同じように、ビジネスにおいても、自己判断できる人材を育てていかなければならない。社会に閉塞感が漂う今こそ、ビジネス・インテリジェンスの高い自律型人材が、よりいっそう求められているのである。