サッカーでも同じだ。「日本サッカーの父」と呼ばれたデッドマール・クラマーは、「ゲーム(試合)に勝る師はない」と述べている。サッカーは試合を通して上達するものだ。練習ばかりしていても始まらない。
職場でも、能力開発といえば、まずOJTが重用されている。仕事が人を造り、人を育てる。だから、「仕事は最良の師」といえそうだ。
OJT崩壊
ところで、企業はOJTにどれほど満足しているのだろうか? そう問うことは非常識なので、ほとんどの調査では、OJTの満足度を調査していない。
おそらく不満も多いのではなかろうか? というのも、OJTやOff-JTに分けてはいないが、教育訓練一般に対する不満は、多く寄せられているからだ。
「指導する人材が不足している」、「育成してもすぐ辞めてしまう」、「育成する時間とお金がない」というのが、教育訓練の3大不満である。指導する側の問題、指導される側の問題、訓練環境の問題が挙げられるが、これはOJTにもズバリあてはまっているだろう。
いろいろな現場教育スタイルが、広い意味でOJTとして考えられている。だから、OJTは、システマチックに計画・統制・実施されたものにはなりにくい。ただ仕事をやらせているのであれば、仕事なのか、訓練なのかがわからない。どう教えてよいかもわからない。効果も判断しにくい。とくに、ホワイトカラーの仕事では、この傾向がいっそう強くなるだろう。
皮肉なことだが、企業側はOJTを実施して、人材育成に力を入れているつもりでも、育成される若手社員のほうでは、上司や先輩にしっかりと目をかけられたり、構ってもらったという意識がない。職場に若手の「カマッテ君」が多くなると、「仕事は自分で覚えるものだ」と放置するのも、逆効果になってしまう。放っておかれただけと感じ、どんどん孤立感を高めていってしまうからだ。