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共通価値の創出は
多くの企業が手こずっている
調理用オイルの原料となるキャノーラおよびヒマワリ種子の〈ネクセラ〉は、2005年の発売以来、ダウ・ケミカルの人気商品の一つになった。この種子とオイルには数多くのメリットがある。種子は大豆に比べて1ヘクタール当たり2倍以上の食用油を生み出すことができるため、農家にとっては魅力的な作物である。食用油は保存可能期間も「揚げ油」の寿命も長いため、食品メーカーや食品サービス企業の運用コストを下げる効果がある。そして何よりも、この食用油は競合商品より飽和脂肪の含有率が低く、トランス脂肪を含まない。
ダウのこの成功はビジネスの理想を表している。つまり、イノベーションによって社会のニーズを満たし、なおかつ利益の出る事業を築くということだ。「共通価値の戦略」[注1]という論文のなかで、FSGの同僚であるマイケル・ポーターとマーク・クラマーは、こうした2つの目標の達成を目指してこれからの企業は競争することになると主張している。
企業リーダーはその事実に気づき始めている。社会問題は事業遂行を妨げるやっかいな要因であると同時に、非常に大きな成長のチャンスでもある、と。だが、いまだ多くのリーダーが共通価値の概念の具体化に悪戦苦闘している。