リーダーに要求される3つの集中力

 関心の方向付けは、リーダーの大きな役割である。そのためには自身の関心を何かに集中する術を身につけなくてはならない。「集中した状態」とは一般に、頭のなかから雑念を追い出して一つのことだけを考える状態を指す。ところが神経科学分野における近年の豊富な研究から、集中にはいくつもの方法があり、目的も関係する神経回路もまちまちであることが判明している。しかも、神経回路同士が歩調を合わせる場合もあれば、相反する動きをしがちな場合もある。

 集中の形態を(1)自分への集中、(2)他者への集中、(3)外界への集中という3種類に大きく分けると、リーダーシップ・スキルを発揮するための、新たな知見を引き出すことができる。リーダーは、じっくり内省して建設的な姿勢で他者に関心を集中することで、EQ(心の知能指数)の柱を成す能力を培えるだろう。視野を広げてそこに関心を集中する方法を理解すると、戦略立案、イノベーション、組織マネジメントの手腕が高まるはずである。

 リーダーは皆、自分、他者、外界への集中力をうまく調和させつつ十分に育む必要がある。なぜなら、自分を見つめないと指針を示せず、他者に十分な関心を払わないと愚かな振る舞いをしてしまい、外界を注視していないと不意打ちに遭いかねないのだ。