新興国の大企業の明暗

 今日、新興国の大企業の多くは予想もしなかった存亡の危機に直面している。急速な成長によって確固たる地位を築き上げた企業も、その業界が成熟し、地域の市場が落ち着きを見せるようになると、従来通りの拡大戦略だけでは存続が難しくなってくる。こうした現象が、いままさに中国やインドで起きているのだ。

 途上国の企業は成長を追い求めるあまり、イノベーションや業務運営、ブランド管理といった分野を強化することへの投資を怠りがちである。そのため、大規模に事業を展開して何十億もの売上げを達成している企業でも、成長が鈍り、市場への理解を深める先進国企業との競争が激化した際に、これを迎え撃つ態勢が整っていない。効率化や新規市場での競争優位の獲得など、経済環境が厳しくなっても利益を上げ続ける手段や枠組みが、途上国企業には欠けているからだ。一時は大成功を収めた中国自動車企業の比亜迪汽車銷售(BYD)や奇瑞汽車(チェリー・オートモービル)のように、急激に失速してしまった企業もある。

 次世代の新興国企業は、こうした教訓を真摯に受け止めている。これらの企業にとっては、かなり早い段階から──ビジネスチャンスの萌芽をつかみ、他に先んじて優位性を確立しようと奮闘している時から──企業能力の向上を図ることが必要不可欠である。