大企業社員の多くは内向き志向で、海外の動向に以前ほど注意を払わなくなったように見える。企業にとっての外部である顧客、マーケットに対する洞察力も衰えた。マーケットよりも社内の動きが気になるというタイプが増え、そんな人物が幹部に昇進するケースも多かったのではないか。

 内向きの傾向は、輸出の伸び悩みにも表れている。これほどグローバル化が進んでいる中で、日本のGDPに占める輸出の割合は15%内外の水準。一方、韓国は4~5割、中国は2~3割程度である。海外市場に注力する企業は増えつつあるが、全体的に見れば「グローバルで売る」という意識は弱いと思う。

エンゲージメント指数で
日本企業は最低ランク

 外の世界を見ることを強調したが、組織の内部を見なくてもいいと言うつもりはない。特に「人」の問題が重要だ。社員は高いモチベーションを保ち、ワクワクしながら、生き生きと日々の仕事に取り組んでいるだろうか。それは企業の競争力に直結するテーマである。

 実態はどうか。米国の人事コンサルティング会社KeneXa High Performance Instituteによる興味深い調査(2012年)がある。同社は世界各国の企業を対象に、社員のエンゲージメントの水準を調べている。組織の成功に貢献しようという意識、モチベーションの高さがエンゲージメント指数として示される。

 調査した28カ国の中で、日本は最下位である。トップ5は上位からインド、デンマーク、メキシコ、米国、オランダ。ちなみに、韓国は日本の一つ上で、ワースト2位だった。社員がワクワクしていない、精一杯のことをやろうと思っていないような組織に、果たしてイノベーションができるだろうか。

 では、どうすれば社員がワクワクしながら働き、最大限の貢献をしたいと思えるような組織をつくることができるだろうか。一定規模以上の企業の構成メンバーは男性だけでも、日本人だけでもないはずだ。勝つための仕組みを内蔵した、グローバルで通用する組織をデザインしなければならない。

 本シリーズでは私がP&Gで学んだことを基に、グローバルで勝てる組織をつくるための具体的なアプローチを考えてみたい。