もしいまドラッカーが生きていたら

 不正会計スキャンダルやグローバルな金融危機によって失墜した企業の信頼を回復させる、高い業績責任を課すことなく優秀な人材をやる気にさせる、気候変動、医療、公教育といった社会問題に取り組む、中央アジアや中東などの紛争に対処するといった難題に世界中が苦慮しているが、ピーター F. ドラッカーの英知にちゃんと耳を傾けていれば、このような事態は回避できたかもしれない(むろん、これらの問題を解決する一助になることだろう)。

 これら喫緊の課題について、もしドラッカーが生きていたら、何と述べるだろうか。第一声は「私はそう申し上げましたね」かもしれないが、彼にはそのように言える権利がある。

 数々の著作のなかで人並み外れた先見性を示したドラッカーは、将来を左右するトレンドや迫り来る危機について指摘してきた。また、組織を取り巻く環境を俯瞰し、彼が「断絶」と呼んだ不協和音に着目した。

 困難の予兆はとうに表れているのだから、彼は続けて、こう言うかもしれない。「背後にあるシステムに目を向けてみなさい」

 ドラッカーの場合、だれかの名前を挙げたり、あげつらったりすることは稀であった。彼は、構造、プロセス、規範、日常業務など、組織デザインのなかに根本的な原因を見出した。彼は、企業の最終目的を念頭に置きながら、組織デザインに取り組むことこそ、ビジネス・リーダーの責務であると教えてくれるはずだ。

 そして最後に、ビジネス・リーダーたちに、次のような挑発的な質問をぶつけることだろう。

「あなたの使命は何ですか」

「何をやめるべきでしょうか」