模倣のための具体的な指針をつくる

「分野を問わず、真の意味での新製品が発表されるスピードが速ければ速いほど、競合他社にとっては明確な模倣戦略――事業判断ばかりでなく、リバースエンジニアリングに当たって何をすべきかを決めるための指針――の展開がますます緊急課題となる」
Moreover, the faster the rate at which entirely new products are launched in any field, the more urgent the need for each company in that field to develop a clear-cut imitative strategy ―one that serves to guide not just the business judgments which must be made, but also the way in which the reverse R&D commitments are made.


 イノベーティブな新製品開発と模倣の両方に戦略的なバランスが必要だと説いた上で、レビットは、模倣に当たっての具体的な指針づくりの重要性を唱えている。

 リバース・エンジニアリングとは、先行製品を分解、解析して仕組みや仕様、構成部品、要素技術などを明らかにすることだ。それを実行するための具体的な指針を持て、とレビットは言う。なぜならばイノベーションを企てるに当たっての注意事項や方針を備えている企業でも、模倣に関する基準を設けている企業は少なく、実際、重要視もされていなかった。その結果、模倣への対応は、場当たりで無計画な反応として実施されている。

 読者は、この連載の第2回『製品のライフサイクル』で、「かじりかけのリンゴ戦術」という考え方が示されていたのを思い出していただきたい。製品のライフサイクルでは、「賢明な企業は、リンゴの最初の一口はいらない。二口目でも味は変わらないからである。ただし、かじり尽くされた芯ではなく、二口目でも十分にほおばる量が残されているかを見極めるのが肝心」と指摘する。

 では二口目で十分にほおばる量が残り、甘い汁をたっぷりといただくためにはどうすればよいか。これが模倣戦略であり、リバース・エンジニアリングの指針だ。

 レビットは、「ライバルが少なく、マージンも魅力的な「早い段階」というのがミソである」と言う。

 そもそも、すでに市場に出ている製品をリバース・エンジニアリングして、後発戦術を練ろうとしても、簡単に開発できるとは限らないし、開発リスクが低減されるわけでもない。先発者の場合は、自らの製品を市場が受け入れてくれるかどうかのリスクに直面するが、模倣者の場合は、すでに多くの競争相手がひしめく市場にアクセスするリスクを負っている。その際、強引に値下げしてシェアを確保しようとする競争相手がいる場合は、なおさらにリスクが増す。

「他企業よりも大幅に開発計画期間を短縮できる模倣者が優位に立つことは言うまでもない。ライバルも少ないし、より高く安定した価格で販売でき、何事も有利に事業展開できる」

 レビットはこう述べて、模倣品の計画および創造的かつ積極的なアプローチ法である「イノベーティブ・イミテーション戦略」や「成功率予測」、模倣者が成功率予測を基に段階的に計上していくべきR&D費(「模倣者の損失防御策」)などについてモデルケースを提示する。

 ケーススタディなので詳細は略するが、ポイントは、保険という考え方を持てという点にある。競合他社の新たな活動や成功に対抗してリバース・エンジニアリングのための予算を確保し、研究を並行させるべきであるというのだ。

「保険の額面金額と保険料は、リバース・エンジニアリングへの投資規模に表れる。これは、模倣品をいち早く市場へ出すように想定したものである。時間の経過と共に、修正されるイノベーターの成功確率と模倣者の予測R&D費を反映させて、額面金額と保険料を毎年修正する」

 こうした保険プログラムを、「模倣者の損失防御策」と定義している。