自己変革を促す風土をどう作るか
自己変革を継続している企業には、変化を奨励する価値観や風土がある。これらの価値観・風土は一朝一夕でできるものではないが、それがあるからこそ、どの階層の一人ひとりも変化をいとわず、また自ら将来を見据えて変化を起こしていこうという行動が促される。
組織心理学のエドガー H.シャインは、「3段階の文化レベル」を提唱し、文化には、以下の3レベルが存在すると説く。

組織の文化には目に見える表面的なレベルで文化が表現されたもの(例えば、社名、ブランド、ロゴなど)のレベル1、それらの背景として組織内で共有されている戦略や哲学といった考え方のレベル2、そして、明示的にされていないものの潜在的に当たり前の価値観として存在しているレベル3の3段階で捉えることができるというものだ。
特に、レベル3の「背後に潜む基本的仮定」は、「文化の本質は集団として獲得された価値観、理念、仮定であり、組織が繁栄するにつれて当然視されるようになったもの」として無意識に“当たり前”化している状態と指摘している。
これらは新たな風土を醸成するうえで、経営者が掲げた理念が主要なメンバーに共有され、その後に組織として成功を収めてくると、それらの歴史的な積み重ねによって組織内で誰も疑うことなく無意識に“当たり前”化するというレベルを経て初めて風土として定着するという考え方である。
新たなメンバーがある組織に加わった際に、社名や経営理念などの目に見えて組織を理解できる段階から、次第にそこで出会う多くのメンバーが同じように振る舞い、語っている様子や組織自体が成長している姿を目にすると、その振る舞いこそがその組織の風土であると感じる段階になっていくことなどは、象徴的な例である。
つまり、風土の根幹には無意識的に個々人に内在化している価値観が存在するということだ。その一方で風土は、このような歴史的蓄積のうえで個々人の内面に成り立っているものであるがゆえに、変革には相当な時間とエネルギーを要する。