時間軸を超えて自己変革を遂げていく企業こそが持続的成長の果実を手にできる。「3つの連鎖」が織り込まれたマネジメントシステムの組織メカニズムを機能させる最終的な決め手は、リーダーシップと企業風土。どのような組織でも変革のリーダーシップのあり方で大きく変わる。また、どのような仕組みでも、その風土に合っているかでその効果は異なってくる。まさに変革リーダーのあり方、風土醸成の仕方が自己変革のカギを握るのである。

自己変革を持続する組織に求められる
リーダーシップとは

 経営変革におけるリーダーシップ論については、これまで多くの研究がなされてきたが、ここでは自己変革を継続していくためのリーダーシップのあり方を明らかにしたい。

 一般に変革型リーダーに求められる要素は多数存在する。変革論において語られるリーダー像で焦点が当てられがちなのは、特定の困難な局面を打開する洞察力と、社内の抵抗勢力に屈せず実行しきる突破力だが、これらは有事の特定局面での変革リーダーに必要な力で、いわば普遍的なものである。

 しかし、自己変革を持続させるためのリーダーシップが特徴的なのは、「長期的な時間軸に立つこと」と、「組織が自ら変わる動機づけを行うこと」である。あくまで平時から先を見通す洞察力、また1人のリーダーのみならず、組織全体としての変革力を高めていく環境づくり、メンバー個人の変革への動機づけまでを視野に入れたリーダーシップのあり方である。

●長期的な時間軸に立つ
 持続的に変革を遂げるうえで、「時間軸の連鎖」を視野に組織をリードできることが求められる。それも単に長期的なビジョンを描くだけではなく、現状を見据えてギャップを埋めてビジョンを達成する道筋を描くことが求められる。まさに「10年先と現在(いま)を併せ見る」ことを変革リーダー自らが実践すること、それに加えて、あらゆる状況でも一貫性を持って変革を実行させる不断の推進力を持つことである。これが持続的に組織を牽引するうえで最も重要である。

●組織が自ら変わる動機づけを行う
 トップのみならずメンバーが自ら変革できる仕組みや風土をいかに構築できるかが求められる。リーダーがトップダウンで指示を出し一方的に従わせるようなリーダーシップでは、短期的には一定の効果を上げても、組織が自ら思考する力がないかぎり、中長期的には停滞していく。長期的な進むべき道やスタンスを継続して明確に示しながら、組織に気づきを与えて自ら変化することの動機づけを与え、組織の学習能力を高めていけるリーダーシップが求められる。動機づけを与えて組織力を向上させることは、持続的成長の原動力となる。自己変革を持続できる組織には、長期の時間軸で組織が自ら変革できる動機づけを行うことができるリーダーこそ求められているのである。

 たとえば、GEのジェフ・イメルト会長は後継者の選定要件を2つ挙げている。

・テクノロジーがどちらの方向に進むかを先読みするセンス
・人々のやる気を引き出す力

 まさに将来的な時間軸の観点と組織力を高める観点の双方を視野に入れていることが読み取れる。