メーカーに与える大きな変化

 製品は接続機能を備えてスマート化し、多様なシステムに組み込まれつつある。こうした製品の進化を受け、企業と企業間競争のあり方も激変している。

 スマート温度自動調節器(サーモスタット)は、制御対象を増やしており、それら家電製品の使用状況データをメーカーに送信している。ネットワークを介して相互接続するインテリジェントな産業用機械は、自律的に機能を調整し最適化する。自動車は、運行状況、現在位置、外部環境についてのデータをメーカーに送信する一方、性能向上や故障防止に役立つ最新ソフトウェアを受信する。製品の進化は、運用開始から相当な期間が経過した後も途絶えない。企業にとって、製品や顧客との関係性は永続的なものへと変わりつつある。

 本稿の前編に当たる「IoT時代の競争戦略[注1]」では、接続機能を持つスマート製品が競争状況、産業構造、業界間の垣根、戦略に及ぼす影響を詳しく見て、企業の外部環境に及ぼす意味を考察した。今回は、企業内部への影響を探る。接続機能を持つスマート製品の本質が、製造系企業のほぼあらゆる職能の役割を大きく変える様子を追うのだ。製品開発、IT、製造、物流、マーケティング、販売、アフターサービスなど主な職能の役割は再定義され、相互の連携が強まり、まったく新しい職能分野も生まれている。その一つが、最近手に入る驚異的な量のデータの管理だ。これらすべてが、製造系企業の旧来の組織形態に大きな意味合いをもたらす。現在進行しているのは、100年以上も前に起きた第2次産業革命以来、最も重要な変化かもしれない。