電気を使わず、人力のみで動く

――スケルトニクスの動力は人力のみ。電気やモーターなどを使っていないところが非常にユニークです。この発想はどこから来ているのですか。

 いろんな理由があるのですが、一つは高専ロボコンです。人が操縦するマシンと自動で動くマシンが協調して競技を行うのですが、そのなかでも前者の人が動かすマシンのウエートが大きくて、機構設計に優れていないと、なかなか勝てないルールになっているのです。これに4年間参加したことと、3人とも機械工学科出身ということもあって、機構設計が得意なんです。リンク機構の発想が生まれたのは自然な流れでした。

 身体動作の拡大というと、一般にセンサーとモーターの使用が考えられますが、初号機はあえて特殊な三次元の閉リンク構造を用いることで、搭乗者は無動力で外骨格の手足を操作することが可能です。自分が巨大ロボットになったような拡張感が得られます。

――スケルトニクスの応用分野としては、エンターテインメント分野が中心ですか。

 なぜ起業したのかという話にもつながっていくのですが、初号機をつくった後に、パワードスーツの研究開発をしたいという思いが芽生えます。スケルトニクスは重いものを持てないし、速くも走れない。これとは別に、動作可変型スーツ「エグゾネクス」をつくろうと思い立ちました。そのためには、ものすごい資金が必要です。若いので信頼もないから、自分たちでお金を集める必要があります。初号機を使ってビジネスをまわすことができれば、エグゾネクスの開発資金に充てられるのではないかと考えました。

 じゃあ、どうやってビジネスをまわしていくのか。介護や重作業に応用するアイデアもあったのですが、実際に検討してみると、収益を生み出すまでにものすごく時間がかかることがわかりました。いまある初号機でどうにかお金を稼ぎたい。当時から「ニコニコ超会議」などのイベントに呼ばれたり、動画などで注目されていたことも踏まえて、エンターテインメントに特化していけば、すぐに売り上げを出せるだろうと、ライブパフォーマンスに焦点を絞って起業していくことになります。結果的にその目論見は当たりました。パワードスーツの事業はまだまだ赤字で、研究開発費は回収できていませんから。

 エグゾネクスは500kgを超える重量級のパワードスーツです。これが完成していたら、フォークリフトの代わりになったかもしれないし、レスキュー活動などに使えたかもしれません。4年の歳月をかけて当初目標としていた仕様を満たすことができなかったため、プロジェクトはいったん区切りをつけました。しかし、パワードスーツ自体の研究開発は今後も継続していくつもりです。エグゾネクスプロジェクトで培った基礎技術は形を変えて役に立つ日がやって来ると信じていますから。