カスタマーエクスペリエンスを再定義する(2)
(3)デジタルと人間の(もしくは人間のような)結びつきのバランスを取る
デジタルは、顧客との長期的な関係を築くうえで重要な役割を果たします。しかし、人を介したやり取りもまた同様です。企業がよりパーソナライズされたアプローチを行う方法はいくつかあります。たとえば、Nordstromは、お客様の一人ひとりが特別で、重要で、話に耳を傾けてもらっていると思えるように、店頭の従業員のトレーニングを行っています。買い物客は、信頼できる店員に出会い、その人から他店とは異なる経験をもたらされたことが気に入って、リピーターになります。
デジタルリーダーのAmazonでさえ、リアルチャネルでのタッチポイントに価値を見出しています。同社は最近、最初の実店舗を開店しました。そこでは顧客は何千冊もの本を見て回りながら、親切で豊富な知識を持った店員とのやり取りを楽しむことができます9。
一部の企業はあたかも人と直接やり取りをしているようなエクスペリエンスを提供するためにデジタルテクノロジーを用いています。たとえば、Macy’sでは、一部のオンライン商品に「name a price(価格をつけてください)」という機能をつけました。顧客は、より低い価格をつけて、Macy’sがそれを受け入れるかどうかを待つという仕掛けで、あたかも人間同士で値引き交渉をしているような体験ができます10。
NIKEはNIKEiDを開始しました。これはオンラインで靴をつくることができるサービスで、顧客は自分だけの一足を注文することができます。顧客はデザインから機能的な特長まで、すべてを思い通りに要望することができます。まるで、自分の夢をかなえることに全力を注いでくれる専属の靴職人とコラボレーションをしている気分が味わえます11。
デジタルをしかるべき場所に収める
今後数年間でデジタル化できるものはすべてデジタル化されていくでしょう。しかし、デジタル化できないものがひとつあります。それは顧客です。デジタル投資を最大限活用するには、そしてデジタルの転換点に達するのを防ぐには、企業は顧客のエクスペリエンスをよりパーソナライズして提供する必要があります。つまり、顧客エクスペリエンスから人の要素を減らすのではなく、さらに付加していくのです。
出典
9 “‘Amazon Books’ Debuts In Seattle, The Company’s First Actual Bookstore,“ Huffington Post, November 2, 2015. Retrieved November 10, 2015 from http://www.huffingtonpost.com/entry/amazon-book-store-seattle_56380dc4e4b079a43c0468ac?ncid=newsltushpmg00000003
10 https://www.customerservice-macys.com/app/answers/detail/a_id/5688/~v
11 http://www.nike.com/us/en_us/c/nikeid