卒業式の式辞の約3分の2に
「他者を助けよう」のメッセージ

 世界のリーダーによる次世代への助言は、「他者を助けましょう」という同じメッセージを強調する傾向がある。米国の大学における卒業式の式辞を調べたところ、これを主なテーマとするものが全体の3分の2近くを占めていた。

 学窓を巣立つ人々は「大成した」先達から、寛容になり、時間、労力、専門知識を他人に惜しみなく差し出せば、仕事で成功し、有意義で幸せな人生を送れるはずだ、と太鼓判を押される。しかし、必ずしもその通りにはならない。疲弊への道は往々にして、善意で舗装されている。

 本稿の筆者の一人アダム・グラントは、2013年に『GIVE&TAKE』を上梓した。そこに描かれているのは、心の広い利他的な人が、他者を追い落とすのではなく、引き上げることにより成功する様子である。このような人は、利己的な人や損得に敏感な人と比べて、組織に大きな価値をもたらすことがわかっている。