●介入1:マイクロソフト・アウトルックのカレンダーのデフォルト設定を変更する

 アウトルックのデフォルト設定では、会議に出席可能な時間帯が午前9時から午後5時にハイライトされている。我々は、このデフォルトの時間帯を短くした。社員に早い時間と遅い時間の会議を避けてもらい、それによって出退勤時間を柔軟に変えられるよう、さりげなく促すためである。

 ●介入2:マネジャーに対し、フレックス勤務について話し合うこと、そして自身が模範となることを促す

 次に、マネジャーにタイムカードの記録を見せて、部下が上司の出退勤行動に倣っていることを示した。そしてフレックス勤務の模範となるとともに、どうすればフレックス勤務ができるかを部下らと率直に話し合うよう促した。

 ●介入3:習慣を変えるために、競争を活用する

 多くの職場には、チーム同士の健全なライバル意識が存在する。そこで我々は、チーム対抗のコンテストを実施した。オフピーク時の出退勤、およびパートタイムや在宅勤務など評価が下がりがちな勤務形態を実践したチームには、ポイントが与えられる。定期的に示される実績表と、最も柔軟な働き方をしたチームへの報奨が参加を後押しした。

 我々は、これらの介入を準実験的試験の一部として実施し、本当に効果的だったかを検証した。すると、アウトルックのカレンダー変更とマネジャーへの働きかけ(介入1と2)の後、オフピーク時の出退勤の回数は3.3%上昇したのだ。

 これに続き、コンテスト(介入3)を9週間にわたり実施した。それだけの期間があれば、古い習慣を変え、新しい習慣を身につけるには十分だろうという期待があった。

 これは介入1と2を上回る効果をもたらした。コンテスト終了から2ヵ月経っても、オフピーク時の出退勤数は7.1%増加していたのだ。この事実は、競争の実施中に行動が変化しただけでなく、新しい行動が持続したことを示している。この結果によって、フレックス勤務を促進することが交通需要の管理に役立つことも再確認された。

 変革を求める組織は、その方法に関するアドバイスが欲しければいくらでも得られ、なかには高くつくものもある。しかし我々の実験により、コストをさほどかけない行動介入であっても、職場の規範や文化に実質的な変化を起こせることが判明した。

 行動科学の知見と方法論を活用すれば、マネジャーと組織はシンプルな手段を試すだけでも効果的な方法を見出せるだろう。


HBR.ORG原文:How We Nudged Employees to Embrace Flexible Work,  November 03, 2017.

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シンディ・ウィリアクスマ(Cindy Wiryakusuma)
ニューサウスウェールズ州首相内閣府、行動インサイトユニットの主席政策官。以前は国際開発に関するエコノミストとして、オーストラリア外務貿易省とオーストラリア国際開発庁に勤務。

ホイ・イー・チャイ(Hui Yih Chai)
ニューサウスウェールズ州首相内閣府、行動インサイトユニットのデータアナリスト。

アレックス・キング(Alex King)
ニューサウスウェールズ州首相内閣府、行動インサイトユニットのディレクター。以前は英国政府に勤務し、首相の戦略部門にも在籍。

グレアム・ポインター(Graham Pointer)
ニューサウスウェールズ州交通局シドニー・コーディネーション・オフィスのアソシエート・ディレクター。以前は英国政府で政策と統計の職務を担当。