一瞬で市場を席巻する「ビッグバン型破壊者」

 2016年7月。パンデミックは突然始まった。ポケモンと呼ばれる小さなモンスターが世界中に出現し、公園で、街角で、家の中で、不思議なパワーを見せ付けてバトルを挑んできたのである。幸いなことに、すぐさま献身的な義勇兵たちが立ち上がって制圧に向かった。彼らはスマートフォンに搭載されたあまり知られていないテクノロジーを駆使し、モンスターたちを捕まえて仲間にしていったのである。

 ポケモンGOは、今後続々と登場するであろう拡張現実(AR)を使ったマルチプレーヤー型スマホゲームの、大規模な成功例の先駆けである。そして筆者たちが提唱する「ビッグバン型破壊者」の一つでもある。ビッグバン型破壊者は、登場するやいなや破竹の勢いで市場を手中に収めるが、従来市場を独占してきた商品と比べると成功期間が短い傾向がある(HBRに発表した論文「破壊的イノベーションを超えるビッグバン型破壊[注1]」を参照)

 ポケモンGOの場合、成功期間はわずか数カ月だった。最初の1週間で750万人のプレーヤーがこのゲームをダウンロードした。そして翌週に早くもピークに達し、2850万人が1日平均1.25時間プレーした。しかし10週間後になると、熱狂はおおむね終息していた。ポケモンGOはわずか1カ月で1500万人のプレーヤーを失ったのである。