AI技術の基礎となる情報教育の重要性
――AI人材の育成・教育に対する注目が高まっている背景について、どうご覧になりますか。
ディープラーニングを中心としたAIの技術が成熟してきて、まさに活用できる段階に入っていること。IoTやクラウドなど情報技術の進展により、AI技術の活用に必要なデータも増えていることが大きいでしょう。加えて、生産現場では、かつての熟練技術者が高齢化に伴い不足するなかで、それをAIの技術で置き換えることも可能になりつつあります。従来からオートメーション技術は存在しましたが、より知的な領域までAIで置き換えらえるようになってきたことが挙げられます。
――受講生に期待するところ、受講後に目指すべき姿は。
社内ですでに課題をお持ちの方は、これに対して何らかのAIを活用して解析できるような、そんな成果が出るといいと思います。
受講生のモチベーションとしては、CSやAIについて体系的に学びたいというところが大きいようです。繰り返しになりますが、彼らの多くは、さしあたり、必要に迫られて何らかの先端技術を使っていますが、それがベストかどうかもよくわからない。そこで、AIを体系的に学び直したうえで、実際に使う技術を選定していきたいと考えているようです。講座を通じて、いままで知らなかった技術を学び、企業の現場で使えるようになる。そんなことが起きれば幸いです。
――実際に授業を行った感想は。
CSの補講担当として、アルゴリズムやプログラミングについて教えていますが、受講者のなかには差があるように思われます。情報教育そのものが広く普及していないので、CSの基礎の部分についてご存じない方もいます。そこは本来、高校や大学の教養課程で学んでもいいような内容だと思います。さまざまな分野から受講者が集まること自体はいいことだと思いますが、そういう方の多くは情報系の本格的な授業は受けたことがありませんから、そこをきちんと押さえてもらう必要があります。
私自身、情報処理学会・情報処理教育委員会の委員長として、情報教育の体系化と初等・中等教育における情報教育についてかかわってきて、今回の人工知能講座もその一環といえるものです。情報教育の体系化にあたっては、最後のステップとして、社会に出てからの教育も、そのなかに入れていかないといけないと考えています。社会人の場合は、ビジネスに直結するところで何が必要なのかが明確ですし、そもそも情報分野の人材が不足していることを考えると、ほかの分野からの多くの人材の参画を促すという点で、情報分野のリカレント教育(社会人の学び直し)は非常に重要です。
