偉大なリーダーの「行動」ではなく「思考」を学べ

 我々は、行動力にあふれるリーダーの偉業に魅せられ、その決然とした姿から勇気をもらう。彼ら彼女らは、大胆な行動によって形勢を一変させ、時には大きな成果を上げ、実に魅力的な物語を紡ぎ出す。我々にとって重要なのは、そうした偉業から得た教訓を、ビジネスに努めて生かすことだろう。

 ビジネスマンたちが、『ジャック・ウェルチわが経営』[注1]や『経営は「実行」』[注2]などに強く引きつけられるのは、一つには、「ジャック・ウェルチやラリー・ボシディの行動に倣えば、自分も偉業を成し遂げられる」と確信できるからに違いない。

 しかし、このような思考はリーダーの行動に焦点を当てており、間違いである。なぜなら、同じ企業、同じリーダーの配下であっても、状況が異なれば、いかに成功手法であろうと、成果が上がらないことが少なくないからだ。

 振り返れば、ジャック・ウェルチは、ゼネラル・エレクトリック(GE)のCEOに就任した当初、「市場シェアがナンバー・ワンか、ナンバー・ツーでない事業は、再建か、売却か、さもなければ閉鎖する」とぶち上げ、この方針に強いこだわりを示した。

 ところが数年後には、「市場シェアが10%を超えないのであれば、その事業の市場を再定義せよ」と命じた。このため、GEのビジネス・リーダーたちは、これまでの事業領域を超えて、新たなビジネスチャンスを模索しなければならなくなった。

 ジャック・ウェルチの行動から何かを学ぼうとしても、混乱に陥り、支離滅裂な行動に走るのが関の山だろう。なぜならウェルチは、そのキャリアを積むなかで、またGEの歴史を紡ぐなかで、その時々で正反対の道を進もうとする賢慮を持ち合わせていた。

 では我々は、何を教訓とすればよいのだろうか。有意義なアプローチとして考えられるのは、リーダーの思考や認知プロセスから導かれる行動をつぶさに観察することである。ただし、これも難易度が高い。

 私は経営コンサルタントを皮切りに、ビジネススクールの学長となってからも、輝かしい実績を誇るリーダーたちを15年にわたって研究してきた。最近の6年間では、50人以上の卓越する手腕の持ち主たちに、時には8時間にも及ぶインタビューを実施してきた。その結果、彼ら彼女らの多くに非凡な資質を見出した。