実現の難しい
インクルーシブ・グロース

 第2次世界大戦後、グローバル企業と市場中心の資本主義は、とてつもない経済成長を生み出し、人類全体の貧困率を大幅に減らすことができた。

 とはいえ、すべての人がその成長の恩恵を受けたわけではない。先進国ではほんの一部の人々が、近年の経済成長による果実の大半を手にした一方、農村部や都市部の労働者階級の大多数は、社会的・経済的に以前より地盤沈下している。特に都市部で、その傾向が顕著だ。

 その状況は、発展途上国ではさらにひどい。アフリカ、アジア、中南米では経済成長により全体としては生活水準が向上したにもかかわらず、なお10億人以上が極貧状態にあり公式経済に組み込まれてさえいない。農村人口の多い国々では特にその傾向が強く、地方の小作農は近隣の食品会社のサプライチェーンから閉め出されている。近代的農業のノウハウがなく、その技術を学ぶ手段と資金も持たないからだ。