クリエイティブ・クラスが21世紀経済を担う

 アメリカの都市経済学者リチャード・フロリダは、多くの先進国では、「クリエイティブ・クラス」と呼ばれるまったく新しいタイプの労働者が、労働力人口の3割を占めるようになったと指摘する。

 クリエイティブ・クラスとは、新しいアイデアや技術、コンテンツの創造によって、経済を成長させる機能を担う人々で、その中心は、科学者やエンジニア、建築家、デザイナー、教育者、アーティスト、ミュージシャン、エンタテイナーであり、ビジネス、金融、法律、医療などの分野で、独自の判断に基づいて複雑な問題解決に取り組む知識労働者もこれに含まれるという。

 また、クリエイティブ・クラスの特徴は、職業上の分類にとどまるものではない。グローバルなレベルで価値観を共有し、金銭的な報酬よりも、内発的な報酬が動機づけに欠かせない、旧態以前の人材管理技術では手に負えない人々なのだ。

 アメリカではこのようなクリエイティブ・クラスに属する労働者は、過去50年の間に急増し、3700万人に達し、その所得水準は高く、全賃金所得のうち半分近くを占め、製造業とサービス業を合算した金額にほぼ匹敵している。

 このように、クリエイティブ・クラスが一国経済に与えるインパクトは大きく、また、国境を超えて都市を移動していくなど、世界的に流動性が高いために、経済成長を担う存在として注目されている。

 都市間、企業間で世界的な獲得競争が展開されているのだ。

 フロリダの推計によると、クリエイティブ・クラスに基づく国際比較ランキングで、日本はスウェーデンに次ぐ世界第2位とされる。
 そもそも、フロリダがクリエイティブ・クラスという概念に至った出発点には、1990年代前半までに日本の製造現場を徹底して観察してきた経験がある。

 トヨタ生産方式の「カイゼン」に見られるような、日本の製造現場労働者が発揮するクリエイティビティが、新しい人材管理モデルの可能性をフロリダに予感させたのだ。
 しかし、日本産業界の強みであった「ものづくり」も、製品ライフサイクルの短縮化から行き詰まり感が否めず、継続的改善を超える「継続的革新」が求められている。

 また、去る2005年に、日本の総人口は減少に転じ、65歳以上の高齢者が21%以上を占める「超高齢社会」には世界で最初に突入する。労働力不足を埋めるには、女性、高齢者、若者、外国人といった、これまで軽視されてきた「異質の力」を活用する必要が欠かせない。