よい新製品は出るのになかなか売れない……

 売上拡大における最大の課題について企業と話をすると、きまって耳にすることがある。上級幹部は自社のイノベーション創出力には自信があるが、新製品の営業力には不安があるというのだ。筆者らの研究によれば、こうした隔たりが生じる原因は、体系的プロセスと有効な人材戦略が整備されていないところにある。これは大きな問題だ。これでは、企業がいくらR&Dに投資してもリターンが限られる。要するに、革新的なイノベーションを夢見て何百万ドルも投じる企業は、営業手腕をもっと磨かなければならない。

 新製品の営業が難しい理由を突き止めるため、筆者たちは学術文献をくまなく読み、営業幹部を対象に多くの個別インタビューを実施したほか、独自の研究も行った。

 その結果、成果を上げている企業は、「新製品の営業プロセスでは、従来手法とは時間の配分法を変える必要がある」「乗り越えるべき障害や反対意見が従来とは異なる」ことを認識していることがわかった。また、新製品の営業に長けている人材は、既存の製品ラインの営業で成果を上げている人とは、資質や行動が異なることも明らかになった。さらに、成功している企業は、実際に営業に当たる社員をサポートする組織や企業文化を育んでいた。