業務改善プロジェクトは
効率とコストに好影響があるように見えるが……

 フレデリック・テイラーやW. エドワーズ・デミングを筆頭に、管理を専門とする人々は、業務プロセスを改善する方法の開発に熱心に取り組んできた。そして過去20年は、リーン生産方式、シックスシグマ、アジャイル開発手法などの改善手法が、さまざまな業界で脚光を浴びている。数々の研究によれば、これらの手法を導入した企業では、業務効率とコストが大きく改善する可能性があることが明らかになっている。

 しかし、ノースカロライナ大学のブラッド・スターツと、オックスフォード大学のマシアス・ホルウェグとデイビッド・アプトンが、これら手法のメリットを調査して、現実と予想にはギャップがあることに気づいた。「こうした取り組みは常に、初めのうちこそ効果を発揮するが、得られた便益はすぐに薄れてしまう」とホルウェグは指摘し、「研究の報告にはいつも物語の半分しか語られていないという印象を受ける。プログラムを整備することも大切ではあるが、定着化させることも同じくらい重要だ」と述べている。

 改善策の中に継続するものとしないものがあるのはどうしてか。この理由を探るべく、ホルウェグらの研究チームは14カ国に2000店以上の支店を有し、1600万人以上の顧客数を誇るある欧州系銀行で、2012年から2017年の間に実施された204件のリーン化プロジェクトを調査した。対象となったリーン化計画は、本社の主導の下、ある国際的コンサルティング会社のサポートを受けて実施されたもので、リーン化「チャンピオン」(推進責任者)を育てる社内研修プログラムを、各地域支社に立ち上げるプロジェクトである。