●学習に適した環境をつくる

 学習体験の最適化につながる場をつくることは重要であり、軽視してはならない。理想的な学習環境は、雑音がほとんどなく、内省と協働ができるオープンスペース、最適な自然光が入る大きな窓、そして個人で内省やマインドフルネスを実践できる静かなコーナーがあるとよい。

 さらに、食事や間食を提供するなら、健康によく、食べ物に関する最新の脳科学に基づき、エネルギーとパフォーマンスを高めるものにしよう。たとえば、野菜や穀物、ナッツ、ベリー類を多く含み、砂糖が少ない食べ物だ。

 ●注意散漫を招く、あらゆる要素を最小限に減らす

 研究によると、人はひとたび気が散ると、直前にやっていたことに集中力を戻すまで30分近くかかるという。そして、作業が複雑なほど(新しいことを学習するのは、脳にとって最も難しい課題の1つだ)戻るのに時間がかかる。

 しかし、じゃまを減らすべきだと知っているのと、実際に行動に移すのは、似て非なるものだ。教室環境では参加者にすべての電子機器の電源を切ってもらおう(学習体験の一環で使われる場合を除く)。大人数のコースでは、携帯機器のテキストメッセージやメールを読みたい気持ちに駆られるかもしれない(誰も気づかないだろうから)。規律を守ることの重要性を学習者に強調しよう。

 あらゆる通知をオフに設定し、気を散らす機器や物をすべてしまって、学習に集中して取り組めるようにさせるのだ。

 ●各学習セッションの開始時に、2分間のマインドフルネスを実践する

 学習体験の初めと各学習セッションの開始時に、数分のマインドフルネスの訓練をしよう。すると、参加者は頭の中の雑念を取り除き、新たなアイデアや学習内容を受け入れられるようになる。

 静かに2分間座り、心身をリラックスさせて、呼吸に集中し、雑念を取り払う、という単純な方法で構わない。補助としてこのアプリを使ってもいいし、正式な研修過程にマインドフルネスの練習を組み込んでもいいだろう。

 ●休憩の時間を大事に過ごす

 参加者の休憩時間の過ごし方に気を配ろう。休憩時間を使って仕事の状況を確認する人が非常に多いが、これは2つの理由から学習に有害だ。

 第1に、情報を頭に定着・浸透させる機会が失われる。そのため、情報の短期記憶から長期記憶への移行が阻まれるのだ。第2に、頭の中の雑念がさらに増えてしまう。

 主催者は、参加者が携帯電話をチェックしたくなる衝動を抑えられるよう手助けをしよう。意識に有益な休憩を楽しむように勧めるのだ。外を散歩する、日記の記録を書き込む、同僚と学びについて振り返る、などである。

 研修後も、マインドフルネスの訓練を毎日10分実践するよう奨励するとよい。学習者の意識がより澄みわたり、集中力が増し、穏やかになれば、学習内容を記憶に留めておける可能性が高まるからだ。


HBR.ORG原文:How to Get People to Pay Attention During Corporate Trainings, March 12, 2019.

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ジャクリーン・カーター(Jacqueline Carter)
ポテンシャル・プロジェクトのパートナー兼北米ディレクター。ラスムス・フーガードとの共著に、One Second AheadThe Mind of the Leader(以上、未訳)がある。

ラフル・バルマ(Rahul Varma)
アクセンチュアのシニア・マネージング・ディレクター。人材開発部門を主導し、卓越した人材の発掘、触発、教育を行う。これまで人材開発業務で重要なイノベーションを主導し、受賞歴がある。デジタル学習ボード、90以上のネットワーク化された教室、学習センターのグローバルネットワークを駆使して、学習者のパフォーマンス向上と社内学習の新しい方法を生み出す革新的なアプローチを実践した。

ラスムス・フーガード(Rasmus Hougaard)
グローバルなリーダーシップと組織の発展を支援する企業、ポテンシャル・プロジェクトの創設者兼マネージングディレクター。クライアントには、マイクロソフト、アクセンチュア、シスコほか、数百の組織がある。The Mind of the Leader(未訳)共著者。