男性は毎朝、一見何でもないようで実は重大な決定を下している。何を着て職場に行くかという決定だ。ほとんどの人は判で押したようにスーツを手に取る。色はチャコール、ネイビー、またはブラックのいずれか。一工夫するとしてもポケットチーフかソックスの色味程度だ。

 みんな同じであることに不思議はない。英国と北米では、スーツは文化的に最も認められている男性用オフィスウェアなのだ。だが、無地のスーツではなく、たとえば飾り立てたジャケットやスパンコールのついたレギンスを選ぶ男性がいたら、周囲はどう思うだろう。この仮定の問いは意外に奥が深い。男性が仕事の場で何を思っているかという問題にもつながるし、思いがけず組織文化に影響を与えている要因にも迫るものだからだ。

 ここ3年、私は男性、男らしさ、そしてファッションについての研究プロジェクトを実施してきた。トロントもしくはその周辺に住まいか勤務先のある、22歳から78歳までの男性50人を対象に、詳しく話を聞き、家を訪ねてワードローブを見せてもらった。人種、民族、体型、性的指向、職業、そしてファッションスタイルも異なる人々である。彼らから、毎朝どのように服の選択をしているか、そして服にまつわる記憶、経験、そして感覚について話を聞かせてもらった。