グローバルBU設立に合わせ
地域統括会社体制を一部見直し

岡部 海外グループ子会社の管理についてはいろいろな手法があります。御社は海外5拠点に地域統括会社を設置して、リスク管理やコンプライアンスに関して監督・指導する体制を取っていますが、この体制を今後どのように発展させるお考えですか。

小幡  (新野隆)社長から直接指示を受け、現在、法務・コンプライアンス体制のあるべき姿の再検討を進めているところです。

 かつては、日本で通信機器などを製造し、海外で販売する形態での海外進出でしたので、個々の取引を通じて東京本社でコントロールすることができました。しかし、ソリューション事業へと軸足を移していくなかで、各地域でシナジー効果を出すことが求められたため、約10年前に地域統括会社(RHQ:リージョナルヘッドクォーター)を海外5拠点に設置し、それぞれの地域で傘下の子会社を管理する手法に変更しました。

 RHQにも東京本社と同様に、法務、経理、財務、人事などのコーポレートファンクションを持たせて地域全体を統括するわけですが、地域によってはさまざまな理由から十分な要員を配置できないRHQがありました。

 そのため、今年4月から一部の地域は東京本社が直轄することにしました。具体的には従来はロンドンのRHQが統括していたロシア、アフリカ、中東と、アジア太平洋地域を統括するシンガポールのRHQでカバーしていたオーストラリアです。

 当社はグローバル事業の成長を加速させるため、エンタープライズ、ネットワークサービスなど事業ごとに分かれている各ビジネスユニット(BU)に分散していた海外事業を集約し、2018年4月にグローバルBUを発足させ、事業責任と権限を一元化しました。法務・コンプライアンス機能についても、基本的にはグローバルBUの体制に合わせた管理体制を採用しています。

 ただし、グローバルBUが重点的に事業展開を進めている地域のうち、法務・コンプライアンスリスクが相対的に高い国については、集中的に管理しようということで、例えばインドについては、東京本社が直轄する体制に変えています。

岡部 グローバルBUの発足と同時にGEジャパン元社長の熊谷昭彦氏が副社長として同BUを担当されることになりましたが、グローバル企業での豊富な経験と実績を持つ熊谷氏とは、海外子会社に対するガバナンスの利かせ方について、どのような話し合いをされていますか。

小幡 これまで当社のコンプライアンスの取り組みは、東京本社のコンプライアンス推進部が中心となって施策を考えたり、教育・啓蒙したりするなど、プッシュ型のアプローチでした。社長や会長も「コンプライアンスを大事にしよう。企業文化にしよう」と口を揃えて言っていますが、熊谷副社長からは、それを自分事として取り組んでもらうために、海外子会社トップや各部門長にコンプライアンスについても、よりオーナーシップを持たせたほうがいいのではないかとの指摘を受けたことがあります。

 つまり、自社や自部門のリスクを子会社のトップや部門長が自分で判断し、私たちグループファンクションがリスク管理をサポートする、いわばプル型のアプローチです。

 外部の調査会社に聞いたところでも、真のグローバル化が進んだ企業では、各子会社トップ・部門長がリーダーシップを発揮し、リスク管理のPDCAサイクルを回している例が多いとのことでしたので、NECでもいまそれを目指して取り組んでいます。

岡部 具体的には子会社トップや部門長にどのようにリーダーシップを発揮させるのでしょうか。

小幡 まだ昨年から始めたばかりなのですが、まずは自社、自部門のリスクを定義し、そのリスクをどう管理するのか、その洗い出し作業をしてもらい、各子会社の社長・部門長とグループファンクションの部長が1対1で面談して議論しています。

 私やコンプライアンス推進部のメンバーも、各子会社の社長・部門長との対話を意識して増やしています。