企業価値の守護者であり
ビジネスパートナーでもある法務

岡部 海外子会社を含めたグループ全体でリスクを管理しようとすると、法律や規制に関する知識に加えて、語学力があり、世界的な政治・経済の動向についても感度の高い人材の育成が必要になりますね。

小幡 私も日常的に外国人と仕事をしていますが、語学力は100%じゃなくても問題ないと思っています。法務・コンプライアンスの領域では、法律を読んだり、契約書を作成したりする仕事が多いので、英語の読み・書きについては、かなり高いレベルが要求されますが、話したり、聞いたりするのは必ずしも100点である必要はないと思います。それよりも、基本的な対人コミュニケーション力や問題を察知する能力、世界情勢に対して好奇心を持つといった部分を磨いてもらったほうがいい。

 それから、マネージャークラスに必要なのは、プロジェクトマネジメント能力です。何らかのリスクが顕在化した場合、例えば訴訟や紛争などが生じたときには、素早く事実関係を把握して、その分野に詳しい弁護士チームを起用して対策の方針を立て、経営トップに提案しなくてはなりません。多くの人たちを指揮して、プロジェクトを計画通りに進めるマネジメント能力が求められるのです。

 そうした能力を磨くうえで、日頃から多くの弁護士と人的なネットワークを築いておくことも大切です。ビジネス法務の専門家といっても、得意分野はそれぞれ異なるからです。

 私は海外の弁護士ともできるだけ会って、どの国でどの分野が得意なのは誰なのかを把握するようにしています。各国の弁護士と会話することで、国による法律や規制の状況変化を知ることもできます。

岡部 グローバル化の進展やテクノロジーの発達などに伴い、企業のリーガルリスクは複雑化、多様化していますが、法務部門はそれにどう対応していくべきだとお考えですか。

小幡 経済産業省は昨年、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」についての報告書を発表しましたが、その報告書にもあるように、企業価値を守るガーディアン(守護者)としての機能に加え、事業部門が戦略を立案したり、業務を遂行したりする際に法務の視点からそれを支援し、事業部門の価値創出を助けるビジネスパートナーとしての機能が、ますます重要になると思います。私たちもその両方の機能を兼ね備えた法務部門を目指すべきと考えています。

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