ESGは最優先事項

 企業リーダーのほとんどは、気候変動のような緊急課題の解決にビジネスが重要な役割を果たせることを理解している。だが、持続可能性(サステナビリティ)の追求は株主の望んでいることではない、と考える経営者も多い。たしかに、持続可能性に十分配慮していると公言する大手投資機関のトップもいるが、実際には、投資家も、ポートフォリオマネジャーもセルサイドのアナリストも、企業経営者に対して、環境、社会、ガバナンス(ESG)問題に取り組むように要請することは稀である。ESGは投資コミュニティの主流にはまだなっていない、という印象を企業経営者は抱いているようだ。

 しかし、こういう見方はもう古い。筆者らは最近、グローバル機関投資家43社の経営幹部70人と面談した。対象者には、世界の資産運用会社のトップスリー(ブラックロック、バンガード、ステート・ストリート)、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)、カリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)、および日本、スウェーデン、オランダ各政府の年金基金といった巨大なアセットオーナーなどが含まれている。世界最大級の投資機関のうち、これだけ多くの投資機関、これだけ多くの経営幹部に対して実施した調査は初めてのことだろう。今回の調査でわかったのは、ESGが彼らのほとんど全員にとって最優先事項の一つになっているということだ。

 もちろん、投資家は過去数十年にわたって、持続可能性に対する懸念を表明してきたが、最近までその言葉を行動には移してこなかった。調査対象となった投資機関のリーダーの多くは、持続可能性の課題を自社の投資基準に統合する具体的な手順について説明してくれた。そして、彼らの投資対象である企業側のトップは、ESGパフォーマンス(ESGでどのような成果を上げているか)について株主からすでに説明責任を求められているし、もしそうでないとしても、そういう日が近いということが明らかになった。