売上高内部成長率8%を毎年実現させる

 ジェフリー R. イメルトが会長兼CEOに就任した当時、ゼネラル・エレクトリック(GE)は、さながら精巧な機械のように生産性を追求する企業だった。

 GEが、マネジメント・イノベーションを重視するようになって久しい。1952年、ラルフ・コーディナーの時代に、ニューヨーク州クロトンビルのGEマネジメント・ディベロップメント・インスティテュート(現ジョン F. ウェルチ・リーダーシップ開発研究所)がつくられた。ここが世界屈指のリーダー育成機関へと発展していったのは、多くが知るところである。

 さらにジャック・ウェルチの下、GEは思いつく限りの方法を用いて効率化を追求した。ウェルチは具体的なイニシアチブ(GEにおける「事業ビジョン」)を次々に打ち出すことで、収益性を徹底的に追求する手法を開発し、かつそのための意識を醸成した。その一方、主に海外進出と合従連衡によって売上げを伸ばしていった。

 イメルトが、ウェルチの後任としてCEOに就任したのは、2001年9月のことである。しかしその直後、まさに世界は一変していく。企業スキャンダルが次々と発覚し、世界経済は大きな打撃を受けた。そして我々をもっと驚愕させたのは、アメリカ本土を襲ったテロ攻撃である。様変わりしてしまった環境にあって、もはや従来と同じ体制は維持できない。イメルトはそう悟った。

 イメルトのCEO就任5年目を前に、『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌は初めて、イメルトGEの実像に深く迫る機会を得た。HBR編集長、トーマス・スチュワートの質問に答え、イメルトはまず「自分が行っているのは改革ではない」と前置きした。彼はただ、この偉大な効率経営を受け継ぎ、それを損なうことなく、新しい何かを付加してきただけだと言う。

 では、それは何だったのか。一言で言えば、内部の資源による有機的成長(内部成長)である。GEは、この新しい目標を達成するため、GEらしく理路整然と取り組んできた。

 GEには、お家芸と呼べる強みがある。一つはプロセス志向であり、もう一つは、アイデアを考え、検証し、実用化する能力である。イメルトはこれら2つの強みを、新しい目標の達成に生かそうとしている。つまり、既存事業から新しい収益源を生み出すプロセスを構築しようというのだ。

 そしてGEらしく、惜しげもなくそのプロセスを公開した。2005年のアニュアル・リポートでは、本稿でも紹介するチャートを用いて詳細に説明している。GEが自分たちのプロセスを隠そうとしないのは、他社がその内容を知ったからといって、うまく実行できるとは限らないからである。イメルトによると、成功するか否かは、マネジャー一人ひとりが自分自身の頭で考え、実行するかどうかにかかっているという。

 はたしてGEは、イメルトのプロセス志向とリーダーシップによって、この新しい目標を達成できるのだろうか。それは、本稿を読んだ読者自身が判断してほしい。