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現在のセグメンテーションは
本来の役割を果たしていない
世のなかにはさまざまな人がいて、購買パターンも人それぞれである。市場調査や商品開発、プライシング、営業、企業戦略に携わる人ならば、そんなことはとうに承知している。
しかし実のところ、おなじみの「市場セグメンテーション」と呼ばれるマーケティング手法は、大して企業やマーケターの役に立ってこなかった。理屈からすれば、セグメンテーションを正しく使いこなせば、購買する可能性が最も高いであろう顧客層にふさわしい商品やサービスを提供できるはずなのだが──。
市場セグメンテーションは本来の機能を果たさず、いまや広告用のツールとなってしまった。要するに、多くの視聴者におなじみの有名人をテレビCMに起用するために利用するといった程度で、これではマーケティングはキャスティングと変わらない。
本稿の執筆者の一人、ダニエル・ヤンケロビッチはかれこれ40年前に、消費者をデモグラフィックス(年齢や所得、職業や職制など、人口統計上の特性)だけで分類する従来の方式を修正するものとして、「デモグラフィックス以外の特性による分類」という考え方をHBR誌で紹介した。
ただし、現状はヤンケロビッチが当時提唱した姿とかけ離れているようだ。彼はその論考[注1]のなかで、次のように主張した。
・年齢、性別、学歴、年収など、従来のデモグラフィックスは、すでにマーケティング戦略の拠りどころとしては不十分である。
・それよりも、価値観や嗜好、選好といった特性のほうが、消費者の購買行動への影響が大きい。
・適切なマーケティング戦略を立案するには、まず特定のブランドや商品カテゴリーを受け入れそうな市場セグメントを特定することである。
つまりセグメンテーションの目的を拡大して、宣伝部門だけでなく、商品開発、プライシング、流通チャネルの取捨選択にも活用すべきであるという提案だった。しかし現在のセグメンテーションは、これらの目的にほとんど役立っていない。1964年当時と比べて、市場やメディアはより細分化が進み、また消費者も多様化しており、みずからの嗜好や衝動のおもむくままに行動するようになったにもかかわらず、である。