顧客との「対話」がマーケティング効果を改善する

 顧客にすれば、企業からのメッセージなど、うるさいだけだ。それゆえマーケターは、何とか顧客の関心を買おうと、「だれに」「何を」「どのように」伝えるべきかばかりを考えている。しかし、重要な点が見落とされている。すなわち、「いつ」伝えるかだ。

 マーケティングで重要なのは、何よりタイミングである。マーケティングは天気予報やニュース速報のようなもので、時宜を得ていなければ意味がない。早すぎれば忘れられ、遅すぎれば無視される。

 顧客はつねづね、企業のマーケティング活動をうっとうしく思っている。その回数や量のみならず、内容が的外れという点でも、過剰な宣伝広告はかえって致命傷になりかねない。

 先日、あるビジネス紙が「カオスのシナリオ」について報じていた。30秒のテレビCMや出版メディアへの出稿といった伝統な宣伝手法は廃れていく一方だ。にもかかわらず、いまだにより効果的なメディアや宣伝を模索中だという。宣伝活動は過渡期のさなかにあり、従来手法に頼った企業メッセージは無視されるか、気づかれずに埋もれてしまうのが関の山というありさまだ。

 とはいえ、顧客が企業とのリレーションシップを必要とする瞬間というタイミングが存在する。たとえば、人生の節目が訪れた時、あるいは嗜好や企業へのイメージが変化した時などだ。まさにその瞬間に、最適なメッセージを最適な方法によって伝えることができれば、顧客の目に止まりやすいはずである。

 ところが、それができる企業は皆無に等しい。顧客の行動が変化した際に、タイミングよく働きかける企業となるとさらに少ない。

 たとえば、航空会社は営業活動に余念がなく、マイレージ・ポイントを通知するたびに、金のかかった各種販促案内を同封してくる。その一方で、得意客の搭乗回数が減ってきた場合にはどうだろう。その顧客を失いたくなければ、何らかの対策を講じなければならない。しかし、航空会社に限らず、膨大な顧客のありとあらゆる行動、あるいは無反応を人海戦術によって追跡し続けることなどできない。となれば、沈黙する顧客には、手をこまねくほかない。

「いつメッセージを発するか」。このマーケティングの課題は技術的に解決できる。それは、コンピュータを利用する「ダイアローグ・マーケティング」という新しいモデルである。ダイアローグ・マーケティングは、データベース・マーケティングからリレーショナル・マーケティング、そしてワン・トゥ・ワン・マーケティングへと、今日まで発展してきたマーケティングの最先端手法である。