「つながり」の創出が多様な価値を生む

Hideo Matsue
デロイト トーマツ グループ CSO(戦略担当執行役)
経営戦略・組織改革/M&A、経済政策が専門。デロイト トーマツ グループに集う多様なプロフェッショナルの知見をグループ全体で共有し、より高い次元のインサイトやソリューションを継続的に創出・発信するためのグループ横断的なプラットフォームであるデロイト トーマツ インスティテュート(DTI)の代表も務める。中央大学ビジネススクール客員教授、事業構想大学院大学客員教授。フジテレビ「Live News α」コメンテーター。経済同友会幹事、国際戦略経営研究学会理事。主な著書に『自己変革の経営戦略~成長を持続させる3つの連鎖』(ダイヤモンド社、2015年)、『両極化時代のデジタル経営—ポストコロナを生き抜くビジネスの未来図』(ダイヤモンド社、2020年)など多数。
── 持続的な企業経営のために、両極をどうつなぐかがポイントになりますね。
はい。両極化の時代における最も重要なキーワードは「つながり」です。両極的なものを分断させず、うまくつなぎ合わせて組織の中で両立させていく。「つながりをいかに構築するか」が両極化の時代における経営変革の核心なのです。新しい価値は、今までバラバラに存在していたものをつなぐことから生まれます。多様化するステークホルダーからの期待に応えるためには、組織がいかに多面的、多層的なつながりを持っているかが問われるのです。
そして、こうした変革には「デジタル」の活用が不可欠です。デジタルの本質も、まさに「データを介して異質なものをつなぐ」ことにあるからです。部分最適のためにテクノロジーを導入するだけでは新たなつながりは生まれませんし、既存のビジネスが多少効率化されたところで経営全体に大きなインパクトを与えることはできません。デジタルトランスフォーメーションに取り組む際には、全体最適の意図を持つことが非常に重要です。
通常、デジタルトランスフォーメーションは「DX」と表記されますが、デロイト トーマツでは意図的にデジタルのdを小文字で表記し「dX」としています。dXの目的はあくまで「経営の変革」であり「デジタルへの変革」ではない、という意味を込め「dX = Business Transformation with Digital」としているのです。デジタルは目的ではなく手段にすぎません。どんなに先進的なテクノロジーを使おうと、それによって新たなつながりが生まれ、組織がトランスフォーメーションできなければ意味がない。これはぜひ強調しておきたい部分です。
(後編につづく)
「つながる力」を生かした経営革新で両極化の時代を生き残る(後編)