2020年9月15日、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューはWEBセミナー「ウィズコロナ時代を勝ち残る“データドリブン経営の実践”」を、セールスフォース・ドットコムとSnowflakeの協賛を得て開催した。新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって、業績を大きく落としている企業も少なくない。一方でデジタル化の進展により、企業はかなりの量のデータを入手できるようになった。今回のセミナーでは、データの力を活用しようという企業文化をいかにして作っていくかという点について、日本国内の先駆者2氏が講演した。
まず企業のビジョンや戦略があって
初めてデータ戦略の話ができる
新型コロナウイルスによる死者が世界合計で100万人を超えた。しかし、どの国も同じように多大な犠牲者を出しているわけではない。台湾のように、コロナの危険性を早くから認識し、入国制限やマスク着用の徹底などの対策を取った国は犠牲者をあまり出さずに済んでいる。
ここで重要な役割を果たしているのが「データ」だ。台湾では新任のIT大臣が指揮を執り、マスクの在庫状況を地図上に示すアプリを作り出すなど、積極的に国民にデータを提供してきたことは、皆さんもご存じのことだろう。コロナと共に生きる「ウィズコロナ」の時代は、少しでも多くのデータを入手し、そのデータを正しい方法で分析して、得られた示唆を活かすことが求められるだろう。
データを正しく活用することが必要になるのは政府や自治体に限らない。民間企業の競争にも深く関わってくるはずだ。しかし、データを経営に活用しようという意識が薄い企業はまだ多い。そこで今回のセミナーでは、国内企業でCDO(Chief Data Officer)を務め、積極的なデータ活用を推進している2氏に、データを活用する企業文化を作る方法について語ってもらった。
最初に登場したのは楽天の常務執行役員CDOである北川拓也氏だ。北川氏は楽天技術研究所の所長も兼任しており、楽天グループではデータ活用に限らず、先端技術の研究開発をリードする人物だ。
北川氏は「まず会社全体のビジョンや戦略があって初めて、データ戦略を語ることができる」と指摘した。楽天には「メンバーシップカンパニー」になるというビジョンがある。このビジョンを実現させるためにデータ戦略があり、データを活用しようという機運が生まれる。
そして、「メンバーシップカンパニー」実現に向けたデータ活用の例として、楽天の各サービスがどのように顧客を獲得し、どのような施策が顧客単価を上げ、サービスの呼び込みにつながっているのかを分析するためにAI(人工知能)やデータを活用していると語った。
北川氏によると、楽天グループには70を超えるサービスがあり、日本国内でのECの流通総額と楽天カードショッピング取扱高等を合わせると約15兆円に上る。日本のGDPがおよそ500兆円、日本人の消費総額が300兆円と考えると、GDPの3%、消費総額の5%に当たる膨大なデータを扱っている計算だ。