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末端社員にまで株式報酬制度を広げる効果
アメリカでは会計制度が改正され、社員に付与されるストック・オプションは損益計算書上、脚注情報としてではなく、費用計上することが義務づけられる。つまり今後はストック・オプションも、他の株式報酬制度と同じく、株主たちの厳しい目にさらされる。いまや一般株主たちも、ストック・オプションには株価を希釈するダイリューション効果と経営陣による濫用のおそれがあることを知り、用心するようになった。
そこで、経営者はその対策の一つとして、ストック・オプションの対象者を減らそうとするかもしれない。事実、各社人事担当者へのアンケート調査の結果によると、末端社員までを対象とした「ブロード・ストック・オプション」を制度化している企業の半数近くが、その受給資格を制限するつもりであるという。
イーストマン・コダック、エトナ保険、タイム・ワーナーなどは、すでに実施に踏み切っている。
しかし、株式報酬を経営層やこれに準ずる層だけの特権として、一般社員には認めないという企業は、長い目で見て損を被ることとなろう。事業の成否を左右するのは、シニア・マネジャーだけではない。さまざまな調査研究が、末端社員にまで対象を広げた株式報酬制度をうまく活用すれば、生産性が上がり、離職率が下がり、優れた人材が集まり、利益が高まることを示している。
うまく実施すれば──そう、それが問題だ。ユナイテッド航空では、1994年から株式報酬制度の一形態である「ESOP」(従業員持ち株制度)を始めたが、同社のESOPは初めから失敗に終わる運命にあった。制度は強引に導入されたもので、社員のほとんどに無視され、間もなく代わった新しい経営陣にも反対された。同社が破産法第11条を申請したのは2002年のことである。
対象範囲の広い株式報酬制度をうまく活用するには、適当な方法を見つくろって選ぶというだけの話ではない。我々の見る限り、ストック・オプションか、401kプランか、はたまたESOPか、制限付き持ち株制度か、制度の種類はさしたる問題ではない(囲み「さまざまな株式報酬制度」を参照)。肝心なのは、次の4つの要因だ。
(1)社員のかなりの部分、一般には正社員のほとんどが自社株を保有すること
(2)保有する自社株が、社員たちが自分たちの経済状況が好転すると期待できるだけの規模であること