受け身のアプローチでは
目標達成できない

 交渉について顧客に助言する際、筆者らはよく、交渉戦略をどのように策定するつもりかと尋ねる。たいていは、相手側と関わる前に何らかの計画を立てるという答えが返ってくる。たとえば、双方の「交渉不成立時の最善の代替案」(BATNA: Best Alternative To a Negotiated Agreement)を明確にしたり、相手側の主な関心事を調べたりする。

 しかし、それ以上の準備となると、限界を感じるという。最もよく聞かれるのは「相手の出方次第」という声だ。

 問題はない。ごくありふれた交渉なら、通常は受け身のアプローチで十分だ。リスクが低い場合、熟練した交渉人は相手の動きに応じて比較的容易に戦術を変えることができる。最終合意で希望通りの価値を獲得するには、それで十分なことが多い。