慈善財団という存在

 過去20年間で米国の慈善財団の数は2倍に増え、所有する資産の価値は12倍以上にまで増加した。いまや慈善財団は3300億ドルを超える資産を持ち、教育・人道・文化の分野のあらゆる団体に毎年200億ドルを超える寄付を行っている。米国以外で、フィランソロピー(企業の社会貢献活動)やボランティア活動がこれほど充実し、これほど広く行われていると胸を張れる国は世界のどこにもない。とはいえ、我々米国人は一つの社会として、これほどの注力に見合うだけの成果を達成しているだろうか。

 慈善財団とは、財団に資金を寄付する個人と、その資金を使って財団が支援するさまざまな社会的事業との間を結ぶ仲介役である。しかし、財団の役割が受け身の中間業者、すなわち助成金を右から左へと動かすだけのパイプ役にすぎないとすれば、それは本来果たせるはずの役割のほんの一部であり、社会が財団に抱く大きな期待にほとんど応えていないことになる。

 慈善財団は社会の進歩の旗振り役になれるし、そうなるべきである。稀少な資源を、個人の寄付者よりも、政府よりも、有効に活用できる可能性を秘めている。財団は政治的圧力を受けないため、政府にはけっして持てない独立性を保ったまま、社会問題の新しい解決方法を探ることができる。また個人の寄付者と比べれば、規模も大きく取り組みの時間軸も長いうえ、組織運営もその道のプロが行っているのだから、より効果的に社会に恩恵をもたらせるはずだ。