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サプライチェーンは「営業のお荷物」
2001年5月3日、ワールプール・ノースアメリカのリーダーシップ・チームで、ある投票が行われた。もしこの結果が別の方向に転んでいたら、今日、私自身だけでなく、同僚、そして会社の状況もまったく変わっていたことだろう。
いましがたポール・ディットマンと私が正式に提案した投資計画について、当時のエグゼクティブ・バイス・プレジデントのマイケル・トッドマン(現ヨーロッパ地区担当エグゼクティブ・バイス・プレジデント)から「出席者の意見を一人ひとり順番に聞きたい」という意見が出された。これは予想外の展開だった。その時の私はどんな表情をしていたことだろう。
もちろんポールと私は、事前に一人ひとり、その思うところを尋ね、支援を要請した。このような根回しに何十時間も費やしていたとはいえ、それでも不安な面持ちに変わったことは間違いない。
関係者全員の支持はもれなく取りつけていた。我々の提案は、ワールプール史上最大規模のサプライチェーン投資を求めるものだった。全社的にコスト節減が叫ばれている折、我々は何千万ドルもの投資を要求したのである。その一部は、要員の新規採用に充てるものだったが、社内では人員削減も進んでいた。そのうえ、ポールと私はサプライチェーン部門の人間だった。
当時の事情について、もう少し詳しく説明したい。2000年当時、サプライチェーン部門は日々困惑していた。完成品在庫が過剰にならないように、また顧客のニーズを損なわぬようにと努めていたのだが、ワールプールの営業担当者から常々「営業のお荷物」と呼ばれていた。
当時のワールプールの使用可能在庫は87%前後で、社内では、アメリカの4大家電メーカーの納期調査でワールプールは5位だったという苦い冗談も聞かれた。実際、このような実績では信頼のほどは知れていた。我々は最新鋭のITソリューションを提案したが、会社はまったく乗り気でなかった。
その1年半ほど前、ワールプール・ノースアメリカでも大規模なERP(基幹業務統合パッケージ)が導入されたが、初期の成果は期待外れなものだった。ワールプールでは、一日に7万点近くの製品を北米の顧客に出荷しているが、SAPのERPを導入した翌日に出荷された製品は約2000点足らずだったのである。