AI活用の効果を
局所的なものとしないために

 ほとんどのCEOは、人工知能(AI)に組織の動き方を完全に変えるポテンシャルがあることを理解している。彼らはたとえば、小売業者が顧客の注文を先回りして、その顧客に合わせた商品を──もしかすると生産されたその日のうちに──配達するような未来を思い描くこともできる。こんな話はSF小説のように聞こえるかもしれないが、これを可能にするAIはすでに存在する。

 このような未来へと続く道のりをじゃまするのは、その未来にふさわしい企業にみずからを変えていく方法を、企業が把握できていないことである。公平を期すために言っておくと、多くの企業はデジタルテクノロジーの導入に力を尽くしており、顧客への奉仕や提供物の生産の仕方を本格的に変革している企業もある。

 しかし、企業がAIの可能性を最大限に引き出すためには、ビジネスモデルと仕事の進め方を再検討することが不可欠である。単に既存のプロセスにAIを接続するだけでは、プロセスの自動化や新たな知見の獲得は果たせない。また、AIは特定用途(ユースケースと呼ばれる)の膨大なリストの中から機能を選んで局所的に採用することも可能だが、このアプローチでは、その企業のオペレーションや最終利益にさしたる変化を及ぼすことにはならないだろう。それに、各地に散らばったチームが、関係者の支持獲得、訓練、変革管理、データ、テクノロジー、その他もろもろについて、「車輪の再発明」さながらに一から取り組み直さなければならないため、AIの範囲を拡大する際の難易度とコストがはるかに高くなる。